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□どうぞこちらへ
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「嗚呼、やはり降ってきてしまいましたね…」
空は、ポツポツとした雨が大粒の雨に変わりそうな様子。
大雨になる前に、急いで帰るとしましょう。

「さあ、早く帰りましょうバッシュさん」
私は背後に立っている愛しい方に話し掛ける。

「ああ、そうであるな。リヒテンも心配しているだろうし…」
輝くような金髪に、少しキツ目の美しい目。そして端麗な容姿。
どう見ても、という訳ではありませんが、とても私と同じ男には見えません…。

「っと、では帰りましょうか。…あら?バッシュさん傘はどうされたのでs「いや、我輩は最初から雨に濡れて帰るつもりだったのである!」

…持ってくるのをお忘れになったんですね。

「私の傘にお入りください。少し狭いかもしれませんが」
「いや、それでは菊が濡れてしまうではないか!我輩はいいのである!」
私のことを気遣ってくださるバッシュさん。私はすごく幸せです。

しかし…
「早く帰らないと、家に着くまでに大雨になってしまいますから、どうぞこちらへ!」
思った通り、灰色の雲はどんどん濃くなっている一方。それでも断固として動こうとしないバッシュさんを見て、
「仕方ないですね…。では、しばしお手を失礼いたしますっ」

私はバッシュさんの手をつかんで無理矢理に私の傘に入れ、そのまま歩いていくことにしました。
「あっおい菊!手を…」
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