NO.6
□アニメ #5
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ネズミは時々、意味不明だ。僕とダンスだって。無理矢理組まれて、ステップを踏まさせる。
「ワントゥースリー、ワントゥースリー」
ネズミのよく通る声が、軽快なリズムを刻む。
最初はドタドタと振り回されるばかりだったけれど、ネズミのリードは巧みで優雅だ。
さすがは舞台…、女優?
声に出すと、怒らせそうだから言わない。ダンスらしくなってくると、ダンスって大変だ。気持ちいいどころじゃなくて、体力勝負。
見上げると、ネズミは息も乱していない。僕は、みっともなくゼイゼイと肩で息をする。
「も…、無理」
「なんだギブアップか?」
ネズミのどこか愉快で楽しそうな声。不機嫌になることの多いネズミの陽気な様(さま)は、嬉しいけれど。
ドサリと重い音をたてて、ソファへ座り込んだ。ネズミは、そんな僕を余裕綽々に見下ろしている。
「なんだよ」
「アンタ、本当に体力ないな」
「うるさい」
ククッとネズミは笑う。
なんだか、とてつもなく悔しい。
[完] 2011/09/03