騎士×皇子
□『騎士誕生』
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スザクは十四歳の誕生日を過ぎてすぐ、騎士見習いになった。
しかしその腕は、既に見習いというレベルを越えていて、他の同期は誰も歯が立たない。
結局、半年という驚異的な早さで正式に騎士になっていた。
史上最年少の騎士誕生だった。
――あの、十四の誕生日直前の、ルルという少年との出会いは、今でも鮮明な思い出として記憶に残っている。
何故か、皇宮に住んでると言っていた筈の彼の姿を、見付けることが出来なかった。
そのうち騎士団の仕事が忙しくなって、いつの間にか忘れかけていたのだ。
あれから二年半あまりが過ぎた今、まさかこんな風に突然の再会があるなんて、予想してもいなかった。
「やあ、久しぶり」
そんな風に親しげに笑ったのは、帝国の第三皇子ルルーシュ。
「…ルル？」
スザクは、目の前で悠然と微笑むルルーシュを呆然と見上げた。
ことの始まりは三日前、十六歳を迎えた第三皇子が、騎士にスザクを選んだと父に聞かされた時だ。
驚いた。
直系皇族は十六歳になると、自分の騎士を選ぶ。けれど自分が選ばれるだなんて、思いもしなかったのだ。
有力だと噂されている者は他にいたし、皇子とは面識も無ければアピールもしていない。そう思っていたのだ。
よく状況も呑み込めないまま当日を迎えたスザクは、目の前に立った第三皇子の姿に呆然としているうち、皇子の正騎士位授与式を終えていた。
式の後ルルーシュは、私室のある皇子の宮へスザクを招いた。
お茶を運ばせると、バルコニーのティーテーブルを挟んで、二人は向かい合って座る。
皇子が初めての騎士を得る日に相応しい、空は快晴で。
そんな中、スザクは何とも複雑そうな顔でいる。
無理もない。驚かせようと事前の挨拶もさせなかったし、詳しい説明を一切しなかったのだ。
スザクは驚き過ぎて、すっかり呆けてしまったのか無言だ。
「聞きたいこと、あるだろ?」
ルルーシュが促すと、スザクは逡巡を見せながらも口を開く。
「どうして僕、…私を選んだのですか?」
「お前が守るって、言ったから」
ルルーシュは真っ直ぐな瞳をスザクに向けると、簡潔に答えた。
「…もしかして、あの時の約束…?」
スザクは、指切りを思い出していた。
「覚えていたか」
スザクとは、この二年半一度も会えなかった。だから忘れられているかもという不安も、少しだけあったのだ。
けれどスザクは覚えていた。それがルルーシュは嬉しかった。
どれだけ、この再会に焦がれてきたか。
『まるで恋をしているみたいですね』
そう言った侍従の少年に、からかわれたこともあったくらいだ。
――本当は、スザクが騎士見習いになったら、騎士団の詰所へ会いに行こうと思っていた。
それが、ルルーシュがスザクに剣を習おうとしたことが何故かバレていて、詰所付近への立ち入りを禁じられてしまった。
暫くは気落ちして、ションボリするばかりで。
この頃から既に、騎士の候補は何人か用意されていた。皆家柄のいい高級貴族の青年ばかり。
でも、特に興味をひく者はなかった。却って、あからさまなアピールに辟易していたくらいだ。
けれどある時、ふと思い付いた。スザクならば、どうだろうと。
それは、とても素晴らしい考えに思えた。騎士になれば、きっと毎日だって会えるに違いない。