騎士×皇子
□『後日談(ジノとスザクと…)』
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「やあ、スザク! お前、第三皇子殿下の騎士になったんだって?」
そう言って肩を叩いたのは二年先輩の騎士、ジノ。といっても、年は四つ違うから二十歳だ。
「私も狙ってたんだけどなー。とにかく、おめでとうだな!」
「あ…、ありがとうございます」
スザクは、照れたようにハニカんだ。
ジノといえば名門貴族の次男坊で、第三皇子ルルーシュとも歳が近く、皇子の騎士、最有力候補とも言われていたのだ。
スザクの家も貴族だが、格はジノの家に遠く及ばない。ジノ以外の候補者達も同様で、全員が高級クラスの貴族だった。
まさか、中級程度の貴族出身であるスザクが選ばれた時には、皇宮中が驚いたのだ。
騎士団長の息子としてスザクは相応しい実力を持ち、将来を嘱望されてはいた。けれど皇子の騎士は、実力以前に家柄を重視する傾向があったから。
実のトコロ、皇子の騎士と腕はイコールではない為、スザクが成長すれば、皇子達の騎士の中では一番の実力者になるかもしれなかった。
「しかし、あの第三皇子殿下の騎士とは羨ましいよ」
「羨ましい? 『あの』とは…?」
スザクは不思議そうに首をかしげる。
「殿下といえば、母君譲りの容姿も麗しく頭も悪くない。品行方正で、仕えやすい主じゃないか。第三皇子だから、あまり国政にも関わらないという点も気楽だろ」
ジノの言い様に、スザクはすっかり呆れた眼差しを向ける。
「冗談だよ、冗談」
からからと笑いながら、ジノは両手を振った。
「冗談にしても、不謹慎です」
「あはは。スザクは相変わらず、真面目だなー」
そんなやり取りをしていると、バタバタバタと、廊下の角の向こうから誰かが走って来る足音が響いてきた。
立ち話をしていた二人は、そちらを一斉に振り返る。
すると勢いよく姿を現したのは、話のネタにしていた皇子ルルーシュだった。
「――あ、スザク。ここに居たのか探したぞ!」
ルルーシュは、嬉しそうな満面の笑みでスザクを見上げた。
「ルルーシュ様! 皇子殿下が廊下を走るなんて」
めっといさめたスザクに、途端にルルーシュはムッと眉を寄せる。
「なんだ、細かいことを。スザクは堅いな、ちょっとくらいいいじゃないか」
そう言ってルルーシュは、プイッとスザクから目を逸らした。