騎士×皇子

□『わがまま皇子と、騎士』
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「ルルーシュ様、お部屋へお戻り下さい。今は確か、勉強のお時間でしたよね?」

「お前も来るなら、部屋に戻る」

 皇子の騎士になって約半年、今はもう初夏。こんなことは日常茶飯事で。

「それより、なんだその言葉使いは? そんな他人行儀なの、僕は認めてない!」

 目の前にはブータレた、ルルーシュの顔。可愛い顔が台無しだ。

「ルル…ーシュ様」

 取って付けたように呼んでしまう。これも、いつもの事。

 だって、スザクはたかが騎士。帝国の皇子に対して人の目のある所で、馴れ馴れしい言葉使いなんか出来るわけがないのだ。

 こんなやり取りをしているだけでも人の目を引いて、さっきからジロジロ見られているというのに。

 だって、ここは皇宮に出入り出来る者なら、誰もが歩ける回廊なのだ。

 騎士も、侍女も、下働きの召し使いも。勿論、皇族だって通りかかる。

「ルルーシュ、あまりスザクを困らせてはいけないよ」

 偶然通りかかったのは、第一皇子シュナイゼル。


「兄様!」

 当然ルルーシュは、今にも抱きつかんばかりの喜びようだ。

 以前なら、そうしていただろう。けれど、少しばかり大人になったルルーシュは、傍目にもジッと我慢しているのが判る。


 シュナイゼルは、クスリと笑みを漏らす。そうして、ルルーシュに向けて両手を拡げた。

「おいで、ルルーシュ」

 すると今度は躊躇うことなく、ルルーシュは大好きな兄の腕の中に飛び込んだ。

 スザクの目の前で。

 最近のスザクは複雑だ。ルルーシュが誰かと親しげに接しているだけで、胸の奥がモヤモヤする。

 ルルーシュがそうする相手なんて、酷く限られているのに。

 例えば、今みたいに家族だ。

 スザクだって、時には父に甘えることはある。それでも、なにかが違うのだ。

 それにルルーシュは、ずるい。いや皇子なのだから本来自由で、スザクには、とやかく言う権利はないのだけれど。

 スザクが皇宮内で友人や同僚と話してると、どこで見ているのか、必ずと言っていい程に邪魔をするように呼びに来る。

 それだけならまだしも、その後のルルーシュは不機嫌になってしまって。スザクとしては困るし、最近は気を付けて、皇宮では友人となるべく話さないようにしているのだ。


 それなのに当のルルーシュは、スザクの目の前でシュナイゼルに抱き付いたりして、甘えて。

 なんか判らないけれど、スザクはとても面白くなかった。
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