騎士×皇子
□『狙われた皇子』
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帝国の皇都は世界のヘソ、中心にある。嘗ては何十もあった国々は統合され、今は大きく五つのエリアに分かれている。
民族も徐々に混ざり合い、今や混血は当たり前。彼らは新たな帝国の民となっていった。
しかし、それが大多数となっているにも関わらず、未だ血に拘る輩も存在した。
過激な思想を持つ、純血主義のテロリスト達だ。
多くの場合、嫌われ者の彼らだが、時々支持する者もいた。それら支援者が資金と隠れ家を提供し、テロリスト達の撲滅がままならないのが現状だ。
けして取り締まるべく騎士団が弱く頼りないわけでも、手を抜いているわけでも無かった。
奴らは大概、普段は温厚篤実に振る舞って、そんな思想を持つなどと絶対に悟らせないのだ。
だから、その情報が持たらされた時、議論の間は騒然となった。
「あの大臣が、まさか…」
思わずの呟きは、第二皇子クロヴィスだ。
「驚くのは無理も無いが、残念ながら事実だ。そして事態は切迫している」
シュナイゼルは思慮深い瞳を歪めて、コメカミを押さえる。
「標的であるルルーシュが、城を抜け出している」
「…っ!?」
クロヴィスは一瞬、声無き悲鳴を上げる。
彼らの愛しい弟皇子、ルルーシュが狙われる理由は明確だった。
所謂、ルルーシュは混血なのだ。ただしその血は特殊で、けして疎まれる類いのものではない。
ルルーシュの母マリアンヌは、嘗て存在した聖なる小国の、元王家末裔の姫だ。
王家の始祖は神とも精霊とも言われる伝説染みた一族で、持って生まれる容姿はまるでその証拠であるかの如く美しく、周辺諸国にすら崇め奉られていた程だった。
しかし小国であるがゆえ、国の護りには弱く。
帝国が台頭し、世界の平定に乗り出した時、小国は自ら真っ先に下ったのだ。
そうでもしないと、聖なる小国――王家を支持する人々が、帝国にどの様な抵抗をするか判らなかった。
当時の帝国兵団は無敵で、どう抗がおうとも敵う者はなく。それならと、無駄な血を流させる事を回避したのだ。
その潔さに感銘した帝国側は、自らの国へ取り込んだ後も彼の王家を厚く遇した。
帝国でも身分高き貴族の籍を持たせ、今も存続している。
それがマリアンヌの実家であるランペルージ家であり、ルルーシュは希少なその血を引く皇子なのだ。