騎士×皇子
□『兄の心、弟は知らず』
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芸術の秋、とは最初に誰が言ったのか。芸術好きの第二皇子クロヴィスが、最も張り切る季節でもある。
クロヴィスは言った。
「私の主催で芸術祭を開きたいのですが、許可を頂けないでしょうか?」
皇帝シャルルは僅かに思案してみせたものの、うむと頷いた。
「というわけでルルーシュ、君にモデルを頼みたい」
「僕ですか?」
クロヴィスが部屋を訪ねてきたのは、昼食が終わってすぐ後だった。
まだ公務の無いルルーシュは、午前中は勉強だけど午後は暇で、大抵はスザクを呼んで相手をさせている。
でもスザクが来るには、まだちょっと早い時間だ。その前を狙ったかのように、クロヴィスは来た。
「クロ兄様も、出品されるのですか?」
「ああ、そうだよ。絵を描こうかと思ってね」
「わあ、だったら金賞は決まりですね」
「――残念だけど、賞は辞退しているよ。私が出してしまったら賞は決まったようなものだろう。それじゃあ、つまらないじゃないか」
確かにとルルーシュは思った。
クロヴィスには絵の才能が確かにある。けれど、それ以前に皇子をさしおいて、平民だろうが貴族だろうが金賞にすることはない。
それが、どんなに優れた作品だろうともだ。
厄介な事に、例えクロヴィス本人がいいと言っても拘る連中がいる。
だからクロヴィスは、最初から賞を辞退する前提で出品しているのだ。
それすらも渋い顔をする者もいるが、今回は主催で、自ら賞を決められる立場にある。断る立派な理由だ。
「だからねルルーシュ。モデルの件、頼めるね?」
「はい、勿論ですクロ兄さま!」
ルルーシュは大きく頷いた。
クロヴィスは、よく家族の絵を描いた。皇宮のあちこちに、その絵は飾ってあるし、ルルーシュの部屋にも亡き母と妹と幼いルルーシュ三人の大きな絵が飾ってある。
勿論、クロヴィスが描いたものだった。
「失礼します」
その時、侍従ロロが居間に入って来た。
「スザク様がいらっしゃいましたが、いかがなさいますか?」
「来たか!」
ルルーシュは、パッと表情を輝かせた。
「クロ兄様、ご一緒させて貰っても構いませんか?」