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□『遠き彼方の楽園』
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「出血が酷くて危なかったけれど、急所は外れてたんですって」
そう言ったのは、すっかり女性らしくなったカレンだ。驚いたことに、学生だった彼女は教師になっていた。
見た目は変わったけれど、中身はあまり変わらないらしい。
今も真っ赤に熟れた林檎を、ナイフで不器用そうに剥いている。
それは見ていてハラハラする危うさで。
「…俺が剥こうか」
「馬鹿言わないで。私がお見舞いに来てるのに、貴方にやらせられるわけないでしょう」
気を使ったつもりだけれど、怒られた。
「私、貴方のそういうトコロ嫌いだったわ」
「…」
「女より器用にナイフを使うトコロよ。…それって、頑張り甲斐が無いじゃない」
「……そうか?」
「そうよ」
あの日のことをカレンは責めない。
ルルーシュが皇帝であったことも、行った卑劣で残虐な行為も、まるで忘れてしまったかのように。
渡された林檎は、兎にしようと奮戦したらしいけれど、片耳が折れている。
「やっぱり、俺がやった方がよかったんじゃ…」
苦笑しながらも受け取ると、そこは変わらないカレンの強い瞳に睨まれた。
「いただきます」
口に入れた林檎は、やけに甘く、懐かしい味がした。