黒の騎士団×ゼロ
□『ゼロの正体』
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どうするべきだろうか。それを見下ろして扇は、一人途方に暮れていた。
数分前、確認することがあってゼロの部屋を訪ねた。
ノックをしても返事はなかったがゼロはいるはずで、鍵が掛かってないのをいい事に勝手に入ったのだ。
内心、恐る恐る足を踏み入れると、ソファのトコロで誰かが寝転がっているのが見えたのだ。
誰かってゼロでしかあり得ない。けれど、入って来たのに気付かないのか、身動き一つしない。
眠っているのだろうか。
迷いながらも、何気なく覗いた扇はギョッとする。
ゼロは、あの怪しい黒い仮面を被っていなかった。
そして、そこに眠るのは、明らかに日本人では無い綺麗な顔をした少年。
「まさか、ゼロ…なの…か?」
ブリタニア人の、この少年が――。
いや、仮面は被ってなくとも少年は、あの妙なコスチュームを着ている。
ゼロだという証に他ならなかった。
しかし、普段まったく隙がないはずのゼロ――らしい少年は、熟睡している。
その状況が信じられない扇は、ただ混乱して、起こすことも、見てみぬふりで部屋を出ることも出来ないでいた。
その時、唐突に部屋の扉が開いて、誰かが入って来た。
「扇さん遅いですよ。何か…、ゼロ?」
カレンだった。扇の横から覗き込んで、瞳を驚愕に見開いた。
「ルルーシュ!?」
「…ん」
カレンの声に反応するように、ゼロだと思われる少年が小さく身じろいだ。
ゆっくりと、いっそ優雅に瞳は開かれる。
「なんだ? …うるさいな」
それは、深く高貴な紫の色を持っていて。
「扇、カレン、どうし…?」
二人は呆然とルルーシュを見詰めている。ルルーシュ自身も、何か違和感を感じていた。
そして、ふと気付く。
仮面はローテーブルの上にある。ということは、素顔を晒して対面していることになるのだ。
「!」
慌てて顔を手で覆ったけれど、今更それは何の意味も無かった。
「どうしてルルーシュがここにいるの? なんでゼロの恰好を…」
「あ…いや…、それは…っ」
不覚にも頭は真っ白で、案の一つも浮かばない。
「ゼロなのか、君が」
けれど答えを先に出してしまったのは、扇だった。
「――まさか、嘘よね!?」
信じないカレンの言葉に乗ってしまおうかと思ったけれど、真っ直ぐに見据える扇の瞳が、それを押し止(とど)める。
「そうだったら、どうする?」