NO.6

□アニメ #8
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 僕は沙布が好きだった。でも彼女が留学する前、僕とセックスがしたいと言った彼女の願いを叶えてはあげられなかった。

 僕の好きは、そんなに強くはなかったのだと今なら判る。

 何故なら、彼女に対してはいつも受け身で、特別、触れたいとかキスしたいとか、そんな感情が込み上げてくることもなかった。

 もう少し大人になったら、そんな風にも思うのかなと漠然と考えていたけれど、違った。

 だって今は考える。ネズミに触れたいし触れられたい。キスしたいしキスされたい。そんなことを想って、体が熱くなる。

 沙布を想って、そうなることはなかった。けれどネズミを想うと、制御できない何かが込み上げてくる。

 今だって、一つのベッドで、背を向けあっているけれど、目を閉じても一向に眠気は訪れない。

 それは、たぶんネズミも同じで。まだ起きている気配を感じていた。


 僕は思い切って向きを変えると、背中にぺタリとくっついた。

「紫苑、やめてくれ。眠れなくなる」

「さっきまでだって、眠れてなかった。僕も、君も」

「そんなことはない。俺は、そのうち眠れた」

 ネズミの鼓動が、早く大きくなっている気がした。

「僕は眠れない。理由も判っている。君のせいだ」

「なんだって?」

「君のせいだよ。君が僕に、あんなキスをしたから――」

「言いがかりだ」

「違う、誤魔化すな。君だって、あれ以来眠れていないくせに」

「…」

「眠れない理由は、僕も君も逃げているからだ。本当は判っているくせに、僕も…君も」

 ネズミがゴクリと喉を鳴らすのが判った。僕だって、今にも息が止まるんじゃないかと心配になるくらいに苦しい。


「ネズミ、こっちを向いてよ。もう、逃げるのはやめよう。僕は君が好きだ、セックスがしたいくらいに」

 突然がばりと、ネズミがこっちを向く。

「あんた、意外と大胆な発言をするんだな」

「そうかな?」

「そうだよ」

「ネズミは、したくないの? 僕と」

「あんたでも、男同士でできるって知ってるんだな」

「なんとなく、知識だけは…」

「安心しろ、俺も男同士は知識だけだ」

 なんだか引っ掛かる言い方だなと思った。

「認めるよ。俺は、あんたとセックスがしたい。あんたを抱きたい。それでいいか?」

「いいけど、言葉がたりない。前に、君は僕の言語能力がチンパンジー以下だって言ったけど、君の今の台詞だってそうじゃないか」

 ネズミが、クッと笑う。

「そうだな。だったら、ちゃんと人間になるとしようか。――紫苑、あんたが好きだ。たぶん愛しているのだと思う」

 僕は思わず、抱き着いていた。ネズミもキスをする前に、僕を強く抱き締めてくれた。










[完]2011/09/19 06:24
 

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