NO.6
□アニメ ♯5
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アンタが、きっと急所だなんて知らずに触った、首の頸動脈のあたりが、あれからずっと疼いている。それは、たびたび眠りを妨げるくらいに、根深い。
何故、俺だけが引きずって、寝不足にならなければならないのか。
突然の怒りと衝動は抑えきれずに、急激に溢れ噴き出した。
「知っているか?」
「なに?」
アンタの頸動脈に、皮膚の上から指先で触れる。
「ここ、ちょっと強く押さえつけてやるだけで落ちるんだぜ」
「落ちる?」
当然、アンタは知らないのだろう、そんなことは。無垢な子供のようにキョトンと首を傾げる様(さま)に、ただ苛つく。
「試してみるか?」
「試す?」
アンタは無防備に細い首を晒し、目をぱちくりさせる。そして突然クスクスと笑い出した。
「くすぐったいよ、ネズミ」
気が付けば、首筋に指を何度も往復させていたようだ。恐ろしいことに、無意識だ。そんな無意味な行動を俺にさせる、アンタという存在が恐ろしい。
「ネズミ…?」
不思議顔のアンタに背を向けて、ベッドでふて寝する。他にできることがない。
情けない。
[完] 2011/09/03