頂き物
□恋昇−コイノボリ−
2ページ/8ページ
五月五日は子供の日で、つまり祝日。
でも学校好きのあの人ならいつもの応接室に居るだろう。
俺、沢田綱吉は今学校に向ってます。
「…あ。」
応接室の窓から見慣れた煤黄色が見えた。決して染めた訳じゃない、鮮やかな色が太陽に照らされていて、とても美しい。
「綱吉…」
名前を呟けば、胸に甘酸っぱい感情が広がる。
僕をそんな気持ちにさせるのは、後にも先にも沢田綱吉、只一人だけ…
「そんなに走ったら、躓くよ…」
何を急いでいるのか、綱吉にしては結構早いスピードで走りながら校門を潜って行った。
「あ、」
ほら、だから言ったじゃないか。
ズザザっ、という効果音が付きそうな位見事に綱吉は転んだ。
起き上がると恥かしそうに周りに誰も居ないかを確認し、またあのスピードで校舎に入って行った。
「何あの可愛い生き物は…」
例えるなら、絶対うさぎ。
うん、絶対そうだ。
「あれで無自覚だから…」
計算なんかじゃないから、尚更…
「心配でもあるし、可愛いんだけどね。」
きっと綱吉は応接室に来るだろう。
お茶でも用意しておこうか。
でも、その前に
「草壁」
「へい」
「救急箱を用意したら、今日はもう帰って良いよ。」
「分かりました。」
擦り剥いているだろう膝を消毒してあげなくちゃね。
→