頂き物

□恋昇−コイノボリ−
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五月五日は子供の日で、つまり祝日。



でも学校好きのあの人ならいつもの応接室に居るだろう。



俺、沢田綱吉は今学校に向ってます。


















「…あ。」



応接室の窓から見慣れた煤黄色が見えた。決して染めた訳じゃない、鮮やかな色が太陽に照らされていて、とても美しい。




「綱吉…」



名前を呟けば、胸に甘酸っぱい感情が広がる。
僕をそんな気持ちにさせるのは、後にも先にも沢田綱吉、只一人だけ…




「そんなに走ったら、躓くよ…」



何を急いでいるのか、綱吉にしては結構早いスピードで走りながら校門を潜って行った。




「あ、」



ほら、だから言ったじゃないか。
ズザザっ、という効果音が付きそうな位見事に綱吉は転んだ。


起き上がると恥かしそうに周りに誰も居ないかを確認し、またあのスピードで校舎に入って行った。



「何あの可愛い生き物は…」



例えるなら、絶対うさぎ。
うん、絶対そうだ。



「あれで無自覚だから…」



計算なんかじゃないから、尚更…



「心配でもあるし、可愛いんだけどね。」




きっと綱吉は応接室に来るだろう。
お茶でも用意しておこうか。



でも、その前に



「草壁」


「へい」


「救急箱を用意したら、今日はもう帰って良いよ。」


「分かりました。」




擦り剥いているだろう膝を消毒してあげなくちゃね。








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