■絶チル短編ストーリー■

□◆七夕の夢(真木×兵部)◆
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「…何をしてるんです」
「え?笹の葉さらさらだけど」
振り返ることもなく、鼻歌混じりに大きな笹に飾りをつける少佐に、半ば呆れた顔でため息をつく。
「見ればわかりますよ。ただ、大きすぎますよね…笹が」
屋敷の高い天井に届くような背の高い笹を見上げている俺の首に、飾りをぐるっと巻きつけた少佐は子供のような表情をみせる。
「今日は1年に1度しかあえない恋人同士が待ちに待ってのランデブーなんだ。これくらい当たり前だろ」
「…人の恋路より自分の方はどうなんですか」
少佐の隣に立ち、飾りつけをしている手に指先を置き、そしてぎゅっと握りしめた。
「1年に1度だけ会う純粋な恋よりも、すぐそばにいてくれる不純な真木の方がいいな」
「っ…」
ふわりと体を浮かせて俺の耳元でそう囁くと、赤面する俺にはお構いなしで笹の高い位置に飾り付けをはじめた。
「…というより不純ってなんです?少佐」
ふと冷静になって考えてみると、その告白には聞き捨てならない言葉があったことに気づく。
「真木が純粋だったら今頃ここにはいないだろ?あ、でも…」
上を見上げて彼の姿を目で追っていると、思い出したように俺の目の前にテレポートしてきて、じっと瞳を見つめてきた。
「なんっ…」
チュッと音をたてて唇を重ねると、唐突なことであたふたしている俺を楽しむように少佐は言った。
「僕を好きになったんだ…純粋な奴だよ。真木」
「し、少佐っ!!」
俺の唇に触れた柔らかい感触を思い出し、再び赤面する俺の肩をぽんぽんと叩き入口の方を指差す。
「ほら、来た来た」
「えっ…」
賑やかな声と共に、葉や紅葉達に連れられた子供達が手に短冊を持って部屋に入ってきた。
「少佐〜すごいねぇ!」
「うわぁいっ!飾っていい?」
「好きな所に飾るといいよ」
少佐の一言で笹に群がりながら、わいわいと短冊を飾りはじめた。
「お前が子供だったとき、当たり前のことがしてやれなかった。こうして出来るのも真木がいてくれるから出来る事だ…」
笹から少し離れた場所で隣に並びながら様子を見ていると、彼はふんわりと優しい表情をみせて俺の手をぎゅっと握りしめてきた。
「…あなたらしい」
俺はその手を握り返すと、まわりの視線が笹飾りにいっていることを確認して、そっと彼の頬にキスをする。
「今年は会えるといいな」
「そうですね」
空の恋路を心配しがら、笹飾りをする子供の方へ歩み寄っていく少佐の背中を見つめる。

会いたいのに、会えなくなったら。
俺はきっと耐えられないだろう…そばにいたくて、たまらないのは俺の方だから。

『彼の笑顔が曇らないように。ずっと守っていけるように』

笹を見上げてそう願っていた。

*END*
2010*10/3*乙夜

≫なんだろ。久しぶりにパンドラを書くとファミリーになります(笑)##LINK1##までご感想をいただけたら励みになります。

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