■絶チル短編ストーリー■

□◆雨と君と…(賢木×皆本)◆
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どうしてそんなに懐くかねぇ…
お前が雨の中で可愛い声で鳴くから…
「連れて来ちゃったぢゃん…」
俺の部屋で安心したように、膝の上に横になると、目を細めて撫でろと言わんばかりに小さな声でまた鳴く。
「…理性が持たねぇ…な…こ、光一っ!!」
それを、ぎゅっと抱きしめると、背後が雑誌が飛んできた。
「持たせろ!ま、紛らわしい名前もやめろっ!!」
「えぇっ〜お前にそっくりぢゃん。栗色で、色っぽく鳴くあたり」
抱きしめられたそれは、尻尾をパタパタと激しくふり、少し息苦しいとジタバタ暴れはじめた。
「…猫と一緒にすんな…それにここはペット禁止だろ…」

そう。

それは、栗色のサラサラとした毛並みで瞳が大きい子猫。
まあ…ある意味…今まさに喚きながら日番で夕飯を作る皆本に似てたからが本音。
「いいぢゃん!お前はさ、優しい顔してそういう残酷なこと言うわけ?…可哀想な光一…俺が温めてやるからな〜」
びしっと人差し指を皆本に向けたあと、再び膝の上でゴロゴロする子猫の腹を撫でてやる。
「僕は正論を言っただけで…そ、そんな悪人的発想じゃないし」
軽快に鳴っていた包丁の音が、鳴り止んだ。

「…しかし、今回は見事に懐かれたな」
台所を離れると、すっと俺の隣に座りこみじゃれている子猫の方に手を伸ばした。
すると、子猫は皆本の指先に鼻をぴったりとくっつける。

そして。

「くすぐったい…やっ…やめ…舐めるなって…んっ」
子猫が必死に指先を舐める度に漏れる声。
俺の目の前でそれはないだろ。
「なあっ!賢木っ!」
「お前が悪いんだって…紛らわしい声だすから…俺が相手ならまだしも…」
子猫そっちのけで、俺はぎゅっと皆本を抱きしめていた。
「どんな嫉妬だよ…ったく」
俺の腕の中で、呆れ顔なのも見なくてもわかる。
それでもお前のそういう所は俺だけが見ていたい。
「やっ!やっ…だっ」
「猫はよくて、俺はダメなわけ?」
腕の中から床に体を解放すると、上から見下ろしなが、その細い手を取り指先に軽くキスをする。
「だから…張り合う…なっ…んっ」
そして、そのまま人差し指を口に含みゆっくりと翻弄していく。
「や…だっんっ…はぁっ…」
感じやすい体質なのか、段々と大きな瞳が涙で潤みはじめるのを見下ろすだけでも抱いてしまいたいという衝動に駆られる。
「ここ…いいだろ…」
俺は指と指の間に舌を移すと、触れただけで、皆本の体がびくっと動いた。
「はぁ…だ…ダメっ…だっ…て」漏れる声を必死にこらえているが、さすがに泣かれては困る。
「したくなっただろ?」
「…ば、馬鹿っ…」
指先に自由を与えると、涙で潤んだ目をごしごしと赤面しながらこすり、勢いよく起き上がった。
「…な、なに…」
すると、子猫がじっと皆本を見つめている。
そして、肩に乗ると頬をペロペロと舐めはじめたかと思えば、物足りないように体をこすりつけはじめた。
その光景を微笑ましいと思えない俺は心が狭い人間だ…。
「お前な…嫉妬する対象が…」
猫は肩に、俺は皆本の背中に居座りそして空腹に耐えかねたと訴える。
「皆本…ご飯…」
「ん…子猫は改名だな。なぁ〜修二〜」
そう呼ばれた子猫は多分、嬉しそうに、尻尾を振ってにゃあっと鳴いた。

子猫だろうがなんだろうが…
皆本は俺んだって…
大人気ないのはわかってるんだけど…
それでも手放したくない。
だから…
ずっと…
側にいて。そして、俺を見てて。
可愛いお前は俺だけのものだ。

*END*

2009*9/22*乙夜

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