■絶チル小説■
□◆桜の君想う(皆本+チルドレン《中学生ver》)◆
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ゆっくりとこうして眺めるなんて、本当に何年ぶりだろうか。
ことの発端は今から30分前の会話。
「うわぁ〜すごい!見てみてっ!」
任務終了後のヘリの窓にぴったりと額をくっつけた薫が何かを見つけて叫ぶ。
その声に葵と紫穂が彼女を間に挟んで窓の外を見ると『うわぁ〜』という声を最後に沈黙が続いた。首をかしげながら、ふとその景色を確認しながら声をかける。
「お前ら何見て…」
それは、河川敷に沿って咲いている桜だった。それがずっと永遠に続いている風景はそこだけが天国へ続く案内道のように見えた。
「これはすごいな」
「こんなの初めて」
「せやなぁ〜空から見れるのは特権やな」
空から見る景色に感動していたのもつかの間、その提案はやはり薫からだった。
「少し降りたいなあ…ねぇ皆本〜」
スーツの袖をグイグイひっぱる薫の目は、いつも以上にキラキラと輝きが増している。
「帰るまでが任務なの!」
お決まりの台詞を口にするが、多分、僕もどこかで見てみたいと思っていたのかもしれない。
「そうよね…最近ゆっくりと景色なんか眺めてないし。ね、皆本さん」
「うちも見たい!なぁ皆本はん」
ぐらんぐらんと左右に揺さぶられた僕は目眩を押さえながら腕時計を見る。
「…少しだけだからな」
それが甘い考えだった。
近場にヘリが降りられる様子はなく、葵の力で僕達はヘリから飛び出て地上に降りた。
民家も少なく自然が豊かな場所にゆっくりと降り立つ。
周りが静かなだけに、遠くに飛んでゆくヘリの音だけが響きわたっている。その姿を見送ると、あらためてあたりを見回す。
「マイナスイオンの宝庫やね」
長い髪を手でなでる葵から歩く先に目を移すと、限りなく何も見当たらない桜並木道が続く。ただ、目標は持てた。
「ひとまず、あの丘の桜まで行ってみようよ」
「そうだね」
さほど遠くない距離にある丘の一本だけ佇む大きな桜の木を目指すことになって………。