■絶チルBL■

□◆バレンタイン戦争(賢木×皆本+チビ兵部)◆
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今日は2月14日のバレンタイン。
毎年この日のバベル内の殺気はすさまじい。
すでに、出社してから5分たらずで両手の紙袋からこぼれんばかりのチョコレート攻撃にあい、笑顔で素早くかわしてきたはずなのに…。
むしろ女性陣の駆使した確実に渡そう計画にまんまと自分が陥ってしまった結果がこれだ。
気がつくと、ポケットのなかにも小さいものが入っていた。
「緻密に計算された作戦すぎるよ…」
思わず苦笑いになる。
「さてと…」
自分のデスクにずっしりとした重みの気持ちを置き、鞄から取り出した小さな箱を片手に部屋を出る。
僕にとってもこれだけは毎年恒例で、毎年緊張する。

昨日シフトを確認したし、確実に外来に行くだろうからと医療棟の連絡通路で待つ。
『喜んでくれるかな…』
その瞬間だけ乙女になる自分がいささか恥ずかしくなる。
「よう、皆本。おはよう」
「あ、賢…っ」
「ミナモト!ここにいた!」
片手をあげて近づいてきた賢木に駆け寄ろうとすると、背後から猛烈なタックルをしてくる少年がいた。
「き、京介!」
「ミナモト〜探したよぉ〜っ」
自分の目の前で甘えた口調で抱きつく京介を見て、苛立ちをかくせない賢木は、僕の腕を引き抱きついたままの京介を引き剥がそうとする。
「ガキんちょは早くいきなさい。大人の話があるんです〜」
「やだっ!だって僕もミナモトに大切な用事があるんだもんっ!センセこそ早く外来に行きなよ〜!」
「き、京介。なにかな?大切な用事って」
まずはこの場を回避しなければポケットにしまいこんだものを渡せないままになってしまう。
「はい!今日は大好きな人にあげる日なんでしょ?」
「えっ…」
アイツらが吹き込んだとしか思えないピンク色でラッピングされた箱を満面の笑みで差し出す。
(後でよく経緯をつきとめねば…)
「ふーん…」
「ミナモトは嫌だった?」
「え、えっと」
冷ややかな眼差しの賢木の視線が刺さって痛いが、無下にするわけにもいかず。
「ありがと。あとで食べるからね」
「良かった〜っ!」
目線を京介にあわせるためにかがみこむと、首もとに抱きつき頬に小さくキスをされ、間違いなく一瞬時が凍りつく。
「……さ」
「俺行くわ。外来あるし」
「ま、…」
あきらかに不機嫌な顔つきだったのがわかる。原因が彼だとしても、小さな子どもを攻めるわけにはいかず、痛い心を押さえながら京介の手をとり、お互いに背を向けるようにその場を去った。
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