Gruen

□新入社員の登竜門
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束ねてはあるものの、明るすぎる色の髪に、艶やかな容貌は人目を引くというより悪目立ちしている。



それが、ウィリアムがグレルを初めて見た印象だった。





一人前の死神として死神大王の駒になって働く栄誉。それを求めて、今期も多数の死神が王都に集まった。

最初は皆下働き。だが、1年2年と経つ間に陰に陽に選別が行われ、下働きから脱して一人前になれるか、更にその上の地位にまで登りつめるか。


ウィリアムが目指すのは、究極の死神道具を操り、他の死神たちを自在に動かすことができる管理官。

上役の歓心を買い、残業を減らして昇進試験の準備のための時間を確保しなければならない。



当面の目標は、場当たり的に上の気まぐれで与えられる個々のバラバラの任務をそつなくこなすことだ。





その日、ウィリアムが与えられた任務は…






「飲み会の幹事、ですか」

「ウィリアム君、言葉は正確に使いたまえ。新規導入者懇親歓迎companyだよ」

「…かしこまりました」


学生時代には実質的利益を伴わなかったその手の宴会に、下らないという理由でウィリアムは出席したことがなかった。


何の因果で、社会人になってまで、報酬も出ないサービス残業としてのばか騒ぎを耐えなければならないのか。

勤務中は協力や助力も必要かもしれないが、プライベートまで共有する必要性などないではないか…

いろいろ脳内で文句をつけるものの。上役の命令には逆らえない。



談話室で情報誌の記事を漁っているところに、不意に声をかけてくる者がいた。







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