アニメ&原作

□Absurder Grund〜不条理な理由〜
1ページ/14ページ



(ナゼ、かしら?)


何となく癖になったように足が向いて、グレルは今日も葬儀屋店に立ち寄った。

魂刈りの現場が近かったから?―――ロンドンには、マダムと過ごしたバーネット邸もあるし、ファントムハイヴ伯爵家のタウンハウスもある。そこここで顔が売れているから、行けば誰もがそれなりに歓待してくれる・・・


(そう思っているのは、アタシだけ、なのかもネ)



猥雑だとかウザイだとか血液の温度が他人より10℃ばかり高いのだろうとか。いつも言われ続けてきた。

いつの間にか、グレル自身もそれに合わせて、女優の仮面をかぶることに慣れてしまった。


(期待されているなら、応えなきゃ)





それでも傷つく時だってある。



美丈夫な悪魔に訴えてみたら、あなたでもそんな感情を持つことがあるとは想定外です、と一笑に付された。



(あんなふうに言われちゃったら……終わりよ、ネ)



それでも構わなかった。


どうせ拒否できない仕事なら、関わる相手は美しい方が良い。恋に恋して、ひとときだけでも華やいだときめきを感じられるのなら・・・永遠に続くであろう死神生の、単調な日々に少しでもスパイスを効かせてくれるのなら。



(アタシは道化にも、犬にもなれるワ)


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ