アニメ&原作

□Hochzeitsreise〜ハネムーン〜
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手に手を取り合って、豪華客船内の葬儀屋が借りている船室に入ったグレルは、ソファに並んで座っておしゃべりをしたり、葬儀屋が淹れる紅茶を飲んだりしていた。


「そういえば、この船って次はどこに寄港するのかしらネ」


「さあね〜。小生たちがお互いをよぉく知るためには、ゆっくり航海してくれる方がありがたいよ」


「ヤだぁンっ」


葬儀屋の一挙一動に照れたり見とれたり。ほんわりピンクに色付いた時間が、ゆっくりと流れる。




「小生が付けた傷だから、責任を持って手当てさせてもらうよぉ」


そう言って、何度もこめかみの傷口に口付けられた。唾液には殺菌効果があるというが、回を重ねるごとに傷口を転がすような、むしろ開くような舌の動きが加えられて、だんだんグレルは落ち着かなくなる。

それに、気付けば、足と言わず胸と言わず、体全体の密着度がアップしてきている。



「待った待った待った――――ッッ!!!」


とうとうグレルが制止の声を上げた。


「い、いくら部屋で二人きりだからって、ドアの外にはみんながいて、アタシ達……カ、カップルの様子を伺ってるワケだから……」


「ヒッヒッヒ…」


「な、何、笑ってんのヨ!」


「だぁって、人目があるところで、あんな大胆なお誘いをかけてくれる君だから、てっきりそのつもりだと思うさ」


もう前髪は下ろされているし、いつもの不気味な葬儀屋口調だ。表情がいまひとつ読み取れないから、不安になる。

そもそもそれ以前に、告白して、初デートで映画館や美術館に行き、帰り道の公園で初めて手を握り……といった手順が何一つできていないのだ。

何十年か前、ウィリアムにそんなヴィジョンを語ったところ、「まったく……」としか言われなかった。あくまで正当な正しいお付き合いの手順だから照れくさくなったのだと、グレルは信じていた。実際には、ウィリアムがあきれて何も言えなくなったのだとは、微塵も疑わなかった。




「……だーーっ!話してるんだから、ちゃんとアタシの目を見て!顔くらい見せなさいヨ!」


力ずくで葬儀屋の首根っこを押さえ、邪魔な前髪を引っ掴む。



「う………」



途端、グレルは言葉を失ってしまう。


(このヒトってば、何でこんなに非の打ち所のない完璧なイケメンなのヨ……)


視線は釘付けになり、体は硬直した状態で10秒ほど固まっていると、



「―――――っ!!!!!」



体を葬儀屋の両腕に包まれて、唇を葬儀屋のそれに包まれた。


固まったまま、精一杯にもがいて戒めを解く。強い力が入っていたわけではないので意外にたやすく腕が外れたが、いざ自由を取り戻すと、なぜか、うすら寒いように感じた。


「あまりに可愛くって、食べちゃいたくなったよ」


シレッとしたセリフも、前髪が横に流れた状態のせいか、ズキュンッと体内に響く媚薬になる。声までも艶を帯びて聞こえるのだから、世話はない。



「バカッ!!!」


触れられた唇が、熱を持って震える。


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