Silber

□沈滞の銀灰
1ページ/4ページ




その日、珍しく賑やかな団体さんが小生の店の扉を叩いた。

身内を亡くしてしおしおとしている人間が来るよりも、楽しめそうだ。


こういうお客に普通の出迎えは失礼だろう?

小生は棺の中に入って息を潜めた。








「いるか?アンダーテイカー」

「ヒッヒッヒ…よぉ〜こそ。伯爵〜〜♪」

予定通りの反応だねぇ♪一行の中の一人は腰まで抜かしてくれて…

おや。よく見ると。

死神さんだねぇ。


現役でないとは言え、小生が見れば一目瞭然だよ。

何とも、君の魂とその外見が噛み合わないでもぞもぞしているような…そんな気分だろう?

ヒッヒッヒ…小生にはわかるよ…



一行の中の上流のご婦人は、店に放置してある蜘蛛の巣を見て眉をしならせる。

それを見る前に察したのか、君は目を瞑って取り払ってあげている。本当に苦手なんだねぇ。彼女の方がむしろ平気な顔をしているよ。



何とも…健気な心がけじゃないか。


腰を掛ける棺の埃をハンカチで払うところなんかは、なかなか上手い従者ぶりだ。

その貴婦人が君のターゲットかい?それとも本当に彼女に傅いているのかい?


死神としては前代未聞だけど、 どうやら君と彼女は魂の色が似ているんだね。





けれど知っているかい?死神の掟を…



人間に恋をしたら危ないよ。

その人間を守りたくなるからね。


守るために手段を選ばなくなったら…死神はねぇ…




…これはこれは。

いつも他人どころか自分のことにも頓着しない小生が。

初めて会った死神一人が



どうしてこんなに気になるんだろうね。






それはきっと君の魂の色があまりにも…




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ