Silber
□沈滞の銀灰
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その日、珍しく賑やかな団体さんが小生の店の扉を叩いた。
身内を亡くしてしおしおとしている人間が来るよりも、楽しめそうだ。
こういうお客に普通の出迎えは失礼だろう?
小生は棺の中に入って息を潜めた。
「いるか?アンダーテイカー」
「ヒッヒッヒ…よぉ〜こそ。伯爵〜〜♪」
予定通りの反応だねぇ♪一行の中の一人は腰まで抜かしてくれて…
おや。よく見ると。
死神さんだねぇ。
現役でないとは言え、小生が見れば一目瞭然だよ。
何とも、君の魂とその外見が噛み合わないでもぞもぞしているような…そんな気分だろう?
ヒッヒッヒ…小生にはわかるよ…
一行の中の上流のご婦人は、店に放置してある蜘蛛の巣を見て眉をしならせる。
それを見る前に察したのか、君は目を瞑って取り払ってあげている。本当に苦手なんだねぇ。彼女の方がむしろ平気な顔をしているよ。
何とも…健気な心がけじゃないか。
腰を掛ける棺の埃をハンカチで払うところなんかは、なかなか上手い従者ぶりだ。
その貴婦人が君のターゲットかい?それとも本当に彼女に傅いているのかい?
死神としては前代未聞だけど、 どうやら君と彼女は魂の色が似ているんだね。
けれど知っているかい?死神の掟を…
人間に恋をしたら危ないよ。
その人間を守りたくなるからね。
守るために手段を選ばなくなったら…死神はねぇ…
…これはこれは。
いつも他人どころか自分のことにも頓着しない小生が。
初めて会った死神一人が
どうしてこんなに気になるんだろうね。
それはきっと君の魂の色があまりにも…
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