Silber

□二人芝居
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ギイィィ…

古びた店の古びたドアが開く時の弱々しい悲鳴。


「お邪魔するわ」

昼日中とはいえ、貴婦人が供も連れずにお出ましとは珍しいことだ。

「いらっしゃぁい……お葬式のご用命ですか…?」

店の主の一種独特な声がする。決して大声ではないのに、鼓膜を直にくすぐるように響く、声。

「ええ。まだ正確な日程は決まっていないけれど」











「この間も来て下さいましたねぇ。団体さんでしたが」

「覚えていてくれて、ありがとう」

奥に通された彼女が帽子を取ると、赤い髪が広がった。長さはないものの、独特の艶が豊かさを誇示する。


「今日は特別な依頼をするから、一人で来たのよ」

「マダム・レッド…とお呼びしない方が良いですかな?今日のお召し物ですと」


いつも身に着けている赤い衣装ではなく、灰色を基調とした目立たない服装をしている。赤い髪もすっぽりと帽子で覆ってきたようだ。


「店に入ったら誰に聞かれるでもなし、構わないわよ」


葬儀屋は、無神経にも埃にまみれた棺に座るよう勧める。マダムも、ためらうことなく座った。


「思い出したのよ」

おもむろに話し始めたのは…




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