Silber
□Abendrot〜夕焼け〜
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秋って少し寂しいよねぇ
夏のギラギラした「気」が霧散して
一抹の寂寥感が残るんだ
それはまるで
人が一生を燃やし尽くして異界へ旅立つみたいに
「なぁに見てンの?」
うわわわぁっ!…って、小生の赤い死神さんかい…
「オバケでも見たようなリアクションしないでヨ。アタシがこのお店で暮らしてること、忘れてたでショ」
いや、そう言うけどね、人間や魔物の気配なら眠っていても察知できる小生だけどね、
「ンフ♪アタシ、ね…『だぁれだ?』ってやるのが夢だったの」
意図的に息の根を止めることができる死神。気配の消し方も死神特有の方法があるのさ。死神界で小生を知らない者はいない。だから、小生にとっての警戒レベルはうんと低いんだよ。
…あれ?
「アタシはいつもあなたの存在とか…気配とか…息遣いとか…全身で意識しまくっちゃってるのに、あなたはいつも余裕アリアリなんですモノ」
それで「だぁれだ?」なのかい?全く…突拍子もない発想が可愛いねぇ。
「だって、気になるじゃない?……『彼』が、どれくらいアタシを意識してくれているか」
おやおや。
小生としたことが、大切な「彼女」を不安にさせてしまったかい?
「そんなふうに…一人でしんみりみりしてるところなんて、見ていたくないのヨ。心の中をアタシで一杯にして、他のことなんか考えられないくらいにしちゃいたいワ」
ヒッヒッヒ…何とも若者らしい独占欲だねぇ。
でもね…小生の可愛い死神さん…
「あら、夕焼けネ。秋の夕方って素敵よネ」
おや、そうかい?
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