Silber
□Der Strand〜海辺〜
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その朝、小生は隣で眠るグレルよりもずいぶん早く起き出したよ。
なぁに、いつものことさ。小生には、さほど長い睡眠時間がなくても支障はない。
これでも伝説の死神DEATH★
―――なぁんて、言ってみようかね。
死神図書館での事務仕事中は眠気覚ましにコーヒーと紅茶をさんざん飲んだだろうから、今朝はハーブティーを淹れてあげることにしよう。
野菜やら果物やら……美容のために、人間界特製のとびきり新鮮でジューシーな食材を食べさせてあげなくちゃね。そうそう、その可愛らしい歯を丈夫に保つために、カルシウムもね……
ヒヒヒ……小生の仔犬ちゃんの世話を焼くのは、楽しいねぇ。
「アラ、いい匂いネ」
まだまだ眠り足りないだろうに、君は早々と起きてきた。これも想定内だよ。
小生といると、寝付きもいいし寝起きもいい。小生の腕の中で眠らせてあげて、小生が心地よい眠りを与えてあげられるのが嬉しくて仕方ないのさ。眠る前にちょっとした刺激を与えてやるのも効いているのかもしれない。
だけど、まだまだ「運動」とは呼べない程度だよ。
それにしても……喜んで朝食をほおばる顔とか喉元とか手付きとか、すべてが生き生きしているねぇ。
この店にやって来るお客たちの世話をするのも楽しいけど、こんなに「生」そのものな君を見ていると―――
楽しすぎて、クラクラ、するよ…………
君が死神界に泊り込んでいた間、お客さん以外に、同じ横丁の商店街の面々が訪ねて来たりもした。彼らはいつも小生を笑わせるべく、ネタを仕込んでやって来るのに、普段より判定がカライと言われたよ。
そうだねぇ。
最近、誰のどんなネタよりも君自身の方が、小生に笑いを提供してくれているみたいだ。
「……なに笑ってるのヨ」
おっと。知らないうちにグフグフと笑いが漏れていたようだ。
「アタシが食べるのをジッと見て、アナタは食べないの?」
ちょっぴりモジッとして言うものだから、
「ああ〜、もちろん食べるよぉ」
伸び上がって、大きくはないテーブル越しに向かい合って座る君の顔の左側にある三つ編みを持ち上げる。
「あ…★」
「似合ってるよぉ」
そのまま唇の隙間に舌を差し入れる。
「どんな食材よりもジューシーだね」
「★………
///………」
驚いたり赤面したり、照れたり喜んだり。くるくると表情が変わる。
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