Silber
□Storm〜電気〜
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久しぶりにお風呂に入ることにしたよ。
3日ほど前、小生としたことが熱を出して寝込んでしまってね。こんなことは数百年ぶりだよ。
一人でいる時には、疲れなんて感じなかった。楽しいこともなかったよ。だから、貪欲に「笑い」を求めていたのかもしれないねぇ。
最近の小生は、そんなところで変わったと自覚しているよ。
グレルがそばにいるからさ。
そのグレルが献身的に看病してくれたおかげで、すっかり回復した。ありがたいことじゃないか。
そして、仕事に復帰して人前に出るのなら、それなりの身だしなみが必要だと言うんだ。さすが、女優魂の賜物だね。
「廊下に出るのは寒いよぉ」
ちょっと駄々をこねてみたら、
「バスルームはきっちり暖めておいたから、さっさと行きなさい!」
と追い立てられたよ。そんな言葉と裏腹に、内心では君も楽しんでくれているのがわかる。
いつもは小生の仔犬ちゃんだけど、こういう時はお姉さん気取りでチヤホヤ世話を焼いてくれるんだ。
テキパキとタオルや着替えを用意して、さっとドアの外に出る。
かと思うと、「髪も、耳の後ろも、ピカピカに洗うのヨ」なんて、すぐに声をかけてくる。
ヒヒヒ……この先のお世話をする踏ん切りが付かないんだね。
悪いとは思いながらも、ついイタズラ心が出てきてしまうよ。
「ああーまだ少しフラフラするー」
「大丈夫ッ?!
しっかりして!」
試しにちょっと言ってみただけなのに、グレルは待ち構えていたみたいに反応してくる。
「……もう。しょうがないわネ。アタシが洗ってアゲル」
ヒッヒッヒ……計算通りさ。
「言っとくけど、乙女が殿方の入浴を手伝うなんてはしたないコト、普通ならするべきじゃないんだからネ!」
いそいそと袈裟を外して上着を脱いでいくのに、口ではブツブツ言う。いつもの照れ隠しだね。
店にいる時の定番になった赤い神父服も似合うけど、白いアンダーウェア1枚の姿になると、赤い髪とのコントラストが冴えて、華奢な上半身のラインが現れて、いっそう可愛く見える。
半ば視線を逸らしながら小生の服も脱がせてくれる手つきが少し荒っぽいのも……これも、照れ隠しだね。
バスタブに浸かるように小生を促して、グレルは、カットソーとレギンスを着たまんまだ。脇に立って、あくまで「お手伝い」だけしてくれるつもりらしい。
「さ、髪を洗うから、バスタブの縁を枕にする感じでいきまショ」
―――君の膝を枕にしたい―――
なぁんて言ったら、このまま湯漬けにされそうだ。
「?」
「ヒヒッ、わかりましたよぉ」
ここは言われた通りにしておこう。それに、この先どうなるか、だいたい見当がついているのさ。
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