アニメ&原作

□終わりと始まりの物語
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最後ですから、お世話になった方々にご挨拶することにしました。

主人の身に起こった変化をご報告するのも、執事の仕事です。もちろん、それに添えるささやかなプレゼントも、しゃれた特注品を用意しました。






葬儀屋さんのところへ行きました。

お姿は見えませんが、たくさん並べてある棺の一つでお休みになっているのは気配でわかります。


「ねェ、中に……入れて?アタシの…、じゃなくて、アタシも★」


嗚呼、おぞましい。どこぞの死神の幻聴が聞こえます。
私は、そのようなことは口が裂けても言えません。


だから、私は別の空の棺にカードとプレゼントを入れてから、その棺を軽くノックします。


1、2、3。

ノックひとつするにも、あくまで上品に、優雅に。

だいたい、ガンガンと音を立てなくとも中の方はお気付きになるでしょう。


ああ見えて、如何なる時も周囲に注意を払うことを怠らない方なのですから、敵対すると、非常に厄介な存在です。尤も、悪魔にとっては完全な味方など出来ようはずもありませんが。




だから、

「小生を起こすのは、誰だぁい?」

とゆっくり棺の蓋が開くと同時に、私は姿を消しました。



この方には、余計な社交辞令やリップサービスや作り笑いは不要でしょう。




御機嫌よう、伝説の死神殿。









次に、現役の死神方の気配をたどって来ました。


嗚呼、今日もシネマティック・レコードの審査中ですね。ご苦労なことです。


無の空間から、テーブルと人数分の椅子とティーセットを取り出し、お茶の用意をしておきましょう。

一息つくには、さっぱりしたアッサム・ティーがよろしいでしょうね。まさか、いつぞやのような岩塩入りには致しませんよ。

あなた方と関わるのも最後ですからね。一度くらいは執事として完璧なティータイムを提供することにしましょう。



おや…意外に敏感ですね。
「イイ男センサー」とやらにひっかかってしまったのでしょうか。


赤毛の死神に見とがめられる前に、私は姿を消しました。

何故って・・・何と言いますか、照れくさいじゃありませんか。

だから、こちらでも顔は見せずに、お別れしましょう。




ねえ・・・グレルさん、所詮、悪魔と死神は相容れない存在なのですよ。しつこくてウザくて、それでも嫌いではありませんでしたよ、貴方のこと。


見ようによっては、「一途で純粋で健気で真っ直ぐで情熱的」とも見える貴方。

無条件に、貴方をそんなふうに形容できる方なら、そんな方が貴方に愛されるとしたら、ある意味では極上に幸せなことでしょうね。




私にはそぐわないですが・・・


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