Rot U

□Versuchung〜誘惑
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「んん、ッ……」

いつになく早く、グレルの膝が力を失う。

「ヒヒッ、やっぱり、体力が消耗してるのかぁい?」

葬儀屋のひょろりと長い腕が、それを支える。

「濡れタオルで冷やすかい? ああ、さっぱりした飲み物を持って来ようか」

かいがいしくも、キッチンに行ってあれこれ用意しようとする葬儀屋のたっぷりした服の袖を、グレルがつかむ。

「んーー?」

銀の髪に覆われた美貌が、ゆったり振り返ったところに。

「ここにいて。一人じゃ心細いの」

今度は、グレルの方から深く口づけた。

あらためて全身で抱き締め合って、骨格とか筋肉とか体温とか息づかいとかを、感じ合う。

「小生は、君とこうしたかったよ……昨日も一昨日も、ずっとね……」

「……………わかってたわヨ、それくらい」

グレルの言葉の前の微妙な間合いが何なのか、そんなことはどうでもいい。

実のところ、不安だったのだとか、最早どうでもいい。

首を走る傷跡に唇を寄せる。どれくらい古いものなのだろう、わずかに盛り上がって、周りの皮膚とは違う色をしている。

それを唇でたどって、ぺろんと舐めて、カリッと歯を立てるのが、グレルのお気に入りだ。時には加減を間違えて、うっすらと血をにじませることもある。それでも葬儀屋は、笑う。

「ヒヒッ……何とも……刺激的だねぇ〜」

それから、お返しだと言って、グレルの鎖骨が浮き出た部分に歯を当ててくる。

「骨の中でも、いちばん強いのが歯なんだよ。きみの薄い体を支える骨を、小生の歯で噛み砕いたら……」

そんな物騒なイメージも、いかにもグレル好みで。

「極上、でショ。ヤッてみてもいいわヨ」

お互いの感触を噛みしめる時間は、甘くて温かくて、満ち足りて。

「…はぁ…」

グレルがこぼす幸せな吐息を、葬儀屋は唇で受け止める。

「ふ……今日、○回目の、キス……」

「おや、たった○回しかしてなかったかい? それは申し訳なかった……いや、小生も残念で仕方がないよ」

「じゃあ、もっとして」

「ヒッヒ……きっかけは、どんなのがお望みかい?」

「そんなのイラナイ! 目と目が合うたびに、お互いに引き寄せられて、どちらからともなく唇が重なるのがフツウでしょ?」

「じゃあ」

「んっ、」

「1日に何回できるか、試してみようか」

「いいわネ。どんどん記録更新してヨ」


Endlos.


20170926
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