Kurz
□Sehr nett〜イカした先輩
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〈グレルの前にいるのは、貴女です〉
「アンタ、今イイオンナって言ったの? それ、アタシのこと? アタシの魅力がわかるの? (嬉しさを噛みしめる)
ま、まぁ、見る目があるじゃないの。何かの時には呼んであげるから、連絡先、交換しまショ。そ、そんなんじゃないわヨ! い、言っておくケド、アタシに惚れたりしても無駄だからネ!」
これだけを一息でまくし立てる。生来の透明な声質が、より際立つ。
これだけ言っても、本当に「そんなんじゃない」。単に理解者がほしいだけだ。突き抜けてとんがった性質で、敵を作ることが多いグレルだから、自分を支持してくれる者は、とことん大事にする熱さを持っている。むやみやたらと戦うよりも、周囲と仲良く、ちやほやされて過ごしたい願望を持っている。
だが、この場合。
無意識だろうけれど、俺様×ツンデレのダブル発動で、女子のハートをキュンキュンさせちゃう効果が現れてしまっていることに、気づかない。
生来のスレンダーなプロポーションや、妥協なく整えられたキューティクルなロングヘア、舞台映えしそうな立ち居ふるまい。どれを取ってもイカしている。
(ズリィよ。オレ、どうやっても勝てる気がしないんだけど)
ロナルドは、心の中で毒づいた。
どんなにモテたところで、グレルは女子に興味がない。それゆえ余計にたちが悪い。
ロナルドのごとき女好きには、どうやっても到達できない境地に、グレルは自然体で立っているのだ。
「あーー。イイ男いないから、テンション下がっちゃうわネー」
だからやっぱり、そんなふうにボヤくのだった。
20190719