お話

□弟の面影
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「あれ、ナディア?」
「およ本当だわさ」
 魔法学校からの帰り道、制服姿のまま短い赤毛を揺らし歩く蛍火とその横に並んでいる針ネズミのように鋭く長い銀髪に赤いローブ姿の少女アウラ・リベラルが目を丸くする。彼女達が目にしたのは金髪の長髪に青い瞳が特徴的な修道着姿の女、そして友人でもあるナディア・メディアントだった。
「おや、蛍火にリベラルじゃないか。こんにちは」
「こんにちはだわさ。メディアント、また行くんだわさ?」
「あぁ」
「んじゃ着いてく!」
「アタイも行くだわさ。ちょうど新しい服あるか気になってたんだわさよねぇ」
「え? あぁ、まぁいいか。では行こうか」
 突然の宣言に戸惑いの表情を浮かべるナディアだったが、断る理由もないからか気を取り直し笑みを浮かべれば目的の場所へ歩き出した。

***


「あらぁいらっしゃい」
 大きな屋敷に瓦屋のちょっと変わった服屋「和洋折衷」和風な内装に木製の棚や服が並べられマネキンに着物が着せられているが隅には銀の鎧が並んであったり、異国風の服が見本で置いてあったりする。まさに和洋折衷な店だ。蛍火達と同じく制服姿のお客が何人か見える。そこの可愛らしいハート柄の着物に身を包み表情は白髪の髪に隠れて見えないが艶やかな唇が印象的なこの服屋の店主である白髪の女性・和子(ワコ)が入り口で声をかけてきた。

「和子さんいつもすみません」
「アンタが謝ることなんかないだわさ。オシャレチェックは女子にとって必須だわさ」
「ならもっと買っていってほしいっス!」
 女子だらけの中に、まだ声変わり前であろうな少年の声がした。アウラが振り向けば店主の息子であり店員として働くギガが居た。彼は短かい金髪に青い瞳とナディアに少し似た外見をしている。

「やぁギガ君。元気かい?」
「いつもどうもっス、ナディアさん! 見ての通りオレはこの通り元気一杯ッスよ!」
 アウラと蛍火は気をきかせ少し離れた場所で服を探しながらコソコソと話し出す。

「ナディアも未練たらしいだわさね。死んだかもしれない弟に似てる奴に会いにくるなんて」
「忘れられないんだよ、きっと。そのアーサーって弟がさぁ。死んだって確証なない以上行方不明って可能性もあるみたいだしさ」
「ふーん」
 アウラが服を見ながらちらりと視線を会話をしている二人へと向ける。いつも誰にも頼らず一人で立っているかのように気を張っているが今は穏やかな表情のナディア、微かに頬を赤く染め楽しげに話すギガの姿を。

「何の意味があるのか、アタイにはさっぱりわからないだわさ」
 誰にも聞こえないような声でそう呟いた。
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