vitamin-log
□ある更衣室での会話
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炎天下の中キツい練習を終え、部員たちは我先にとシャワー室へと駆け込む。
そして汗も汚れもさっぱり落とし、ほぼ皆が上半身裸で出てくるのだ。
シャワー室と更衣室は繋がっているので、そんなのはもはや当たり前の光景で。
一も例外では無かった。
そんな時に部員の一人が一の背中のある跡を見つけ、ニヤリと笑った。
「は〜じ〜め〜♪お盛んだなぁ」
「は?」
「お?なになに…うわっ、こりゃ凄ぇや」
「何だよ」
「あ〜〜妬けちゃうねぇ」
「だから何だよ!」
一人から伝染して、一の背中を見た皆がニヤニヤとしている。
全く訳が分からない一は首を傾げた。
「背中の傷は髪の長ーい猫にでもやられたか〜?」
「…傷?」
「バァーカ、悠里さんに決まってんだろ」
「おい…――――ああ!」
恋人の名前呼びに眉をひそめかけ、そこでようやく今の話題に気付いた。
昨日は久しぶりに悠里が家に泊まりに来たのだった。
それでまあ……恋人なのだから当然色々とあったワケだが。
首を回して背中を見下ろしてみたが、死角になっていて傷跡は確認出来ない。
仕方なく更衣室の角に置かれた鏡に背中を映してみると。
肩胛骨のすぐ下辺りに多数の引っ掻き傷がついていた。
それも左右満遍なく。
部活中、何か染みるなと思ったらコレだったのか。
一は呑気にそんなことを考えながらシャツを被った。
「にしても随分派手に残されたな」
「まあ、俺が無理させちまったから」
「へーお前が?」
「仕方ねぇだろ、2週間ぶりだったんだもんよ」
「あ〜それはまあ確かに…」
「いつもならもーちっと我慢してやれたんだけどな〜」
「ん?」
「久しぶりだったのと、あんまりにも可愛く泣くから、つい」
「…………(惚気てんのかこの野郎)」
「悠里が意識手放すまで離してやれなかったし」
「…………(野獣だ、野獣が此処に居る)」
「でも悠里の身体のことを考えて数を減らそうと思うんだ」
「そうしてやれ、ただでさえお前体力馬鹿なんだから」
「だから今度からは一晩3回にしようかと思ってさ」
「「「1回で十分じゃい!!!!」」」
一を除く部員の心が一つになった瞬間だった。
後日、練習試合に応援にやって来た悠里に部員一同、何故か涙ぐみながら励ましの言葉を贈ったとか。
end.