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□始まりの一歩
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ライブを終えて、他のメンバーより先に楽屋へ戻って来ると。
瞬の元担任である南悠里に笑顔で出迎えられた。
ライブの後に彼女が楽屋に顔を出すのは最早習慣で、裕次もそれに笑って応じる。



「お、先生!また来てくれたのか」

「こんにちは、裕次君。お疲れ様」

「サンキュ。ライブどうだった?」

「すごく良かったわ!いつ聴いてもヴィスコンティの音は素敵だもの」

「そっか、先生に喜んでもらえて俺も嬉しいよ」



そう笑って答えた裕次に、悠里は微かに顔を曇らせて。
そして少し言いづらそうに口を開いた。



「……ねえ、裕次君」

「ん?」

「その“先生”って呼び方止めない…?」

「へ、何で」

「だって私はもう瞬君の担任でもないわけだし、そう呼ばれるのは変だと思うの」

「う〜ん、言われてみれば……でも名前呼びしたらきっとシュンが妬くぞ〜」

「? どうして?」

「………いや、何でも。でもそっか、分かった。気になるなら直すよ」

「ありがとう、裕次君」



ふわりと微笑んだ悠里に、裕次もニコリと笑い返した。



「代わりにさ、1コ聞いていい?」

「なあに?」

「シュンとはまだ付き合ってないんだよな?」

「!!!? ま、まだって……っ!あ、当たり前でしょう!!卒業したけど瞬君は私の生徒なのよ!!?」

「ふーん。なら、まだオレにもチャンスあるってことだよな」

「そうよ!………って、え?」



チャンス?と首を傾げる悠里の手を、裕次はそっと取って。



「彼氏に立候補。宜しくね、悠里さん」



そう不敵に笑って、唖然としている悠里の手の甲に軽いキスを落とした。





end.
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