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□至上の言祝ぎ
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喜んでくれるかな?
喜んでくれるといい。


プレゼントと一緒に贈る、この言葉を。



翼君と過ごす、5回目の彼の誕生日。
いつもみたく高級レストランを予約しようとしていた翼君は、家で祝いたいという私の言葉に素直に従ってくれた。
この事を伝えるのなら、やっぱり馴染んだこの部屋がいい。そう思ったから。


食事を終え、ソファーでゆったりと過ごしているとき。彼に向かって言った。




「翼君」

「なんだ?」

「話が、あるの」

「話?」




ゴクリと唾を飲み込み、小さく深呼吸し。
真っ直ぐに翼君を見つめる。





「お腹にね、赤ちゃんが居るの」





本当は少し、いやもの凄く緊張していたけど、どうにか震えずに言えた。
しかしいつまで経っても何の反応もないことに不安になって、そっと翼君の方を伺ってみると。

目を見開いて固まっていた。

瞬き一つしないものだから、不思議に思っておずおずと声を掛ける。



「……翼、君?」



その声に我に返ったのか、翼君は思い出したように2、3度瞬きをすると視線を下らせて。
ゆっくりと手を伸ばし、お腹に触れる。
まるで壊れ物を扱うかのように、優しく。



「本当に…ここに居るのか?」

「うん、3ヶ月だって」

「俺と、悠里の子が?」

「うん、私と翼君の子どもだよ」



そうか、と呟いて翼君は尚もその存在を確かめるみたいに撫で続ける。
もう片方の手にそっと手を重ねると、手の甲に、何かがポツリと落ちた。

顔を上げて見たものは。


翼君の頬に伝う、一筋の涙。


驚いて何か言葉を掛けようとする前に、翼君の腕の中へと閉じ込められる。
少し痛いくらいの抱擁。だけどその腕は、微かに震えていた。

しばらく抱き締められたままでいると、一言、今にも消えてしまいそうな声で。

彼が囁いた。




「……………ありがとう」




自然と、涙が零れ落ちる。


嬉しさとか安心感とか色々なものが混じり合って、何一つ言葉にならない。
悲しくなんかないのにこんなに胸が苦しいのは何でだろう。
ただ堪らなくこの人が愛しい。


だからもう一度伝えよう。貴方が生まれてくれた喜びを。
精一杯、この言葉に託して。





「誕生日おめでとう、翼君」







end.
Happy Birthday For Tsubasa!
 

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