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□星が見えない(sideY)
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分からなかった。
他に、どうすればよかったのか私には分からなかったの。
放課後の補習中。
急に一君の様子がおかしくなった。
そう、それは以前みたいに。
癒えない傷に苦しんで、周りも自分も傷付けていた頃の一君の目をしていて。
どうして?
だって最近はそんな様子もなくて、笑っていたのに。
何が一君をそうさせてしまったのか分からなくて。
壁際に追い込まれても、乱暴に抱き締められても抵抗なんて出来ず。
『先生、苦しいんだ』
吐き出すように呟かれた言葉に息が詰まった。
抱き締められる直前に見た彼は、何でか一君が泣きそうな顔をしていた気がする。
泣きじゃくりながら親を探す、迷子みたいな顔。喩えるならそんな顔をしてた。
どうしてそんな顔をするのか。
何が一君にそんな顔にさせているのか。
分からない。
一君には、いつも笑っていて欲しいのに。
『俺の、傍に居てくれ』
そんなことで、一君は楽になるの?
そんな辛そうな顔しない?
だったら、
(一君の、傍に居るよ)
背中に手を回そうとした一瞬、誰かの後ろ姿が脳裏を過ぎ去った気がしたけれど。
それが誰なのか、分からなかった。
end.