request
□永遠を君と
1ページ/1ページ
穏やかな日々。
その一日一日が、とても愛しいのは。
「なあ、悠里!こっちとこっちだったらどっちがいい?」
「う〜ん、こっちかな?」
「だな!やっぱりこっちの方がいいよな」
一君は嬉々としてそれを買い物カゴに入れる。
傍目からも分かるほどの浮かれっぷりだ。
今日の朝から、ずっとこんな感じ。
――――昨日の夜、お腹に赤ちゃんがいると、告白してから。
「ねぇ、一君。はしゃぐのも分かるんだけど、ちょっと気が早すぎない…?」
まだ3ヶ月なのだ。
生まれるのは半年以上先だし、お腹もまだ目立ってない。
それにそろそろカゴに詰め込まれたベビー用品が零れ落ちそうだ。
「そんなことねーよ、思い立ったら即日って言うだろ?」
「吉日、ね……」
あれから随分経つのに、一君は未だに変な間違いをする。
相変わらず人の名前を覚えるのも苦手なまま。
……子供の名前、大丈夫かしら……。
ベビー用品のコーナーを通りすぎて、ベビー服コーナーに入ると。
一君は興味深そうに小さな服を手に取りながら眺めている。
男の子にも女の子にも使えそうなものばかりで、どれも肌触りがよくてフワフワしていて見ているだけで幸せな気持ちになってくる。
そっとお腹を撫でた。
今、私のお腹にいる子は、どっちなんだろう。男の子かな、女の子かな。
もう少し大きくなれば分かるらしいけど。
どっちでも私は、幸せだな。
「…一君は、男の子と女の子、どっちがいい?」
「ん?どっちでもいいぜ」
意外、一君は男の子って言うと思ってた。
そう口を開くよりも前に。
「どっちでも、愛してることには変わりないからな」
一君は、照れくさそうにそう笑った。
胸がいっぱいになって、何でだか泣いてしまいそうになる。
一君は笑って私を抱き寄せて、幸せになろうなって耳元で囁いた。
益々目に込み上げるものが止められなくなる。
穏やかでかけがえのない日々。
例えそこに変化が訪れたとしても。
こうして抱き締めてくれるのが貴方なら。
きっと毎日は幸せで溢れてる。
お腹のこの子が生まれたその日には。
胸いっぱいに抱き締めて。
最大の幸福に感謝しよう。
end.