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□祝詞
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誕生日だからといって騒ぐような歳でも性格でもない。
今年も例年通り、職員から簡単な祝いの言葉をもらって終わりだと思っていた。



「あの、二階堂先生」



夕日が職員室内をオレンジ色に染め上げた放課後。
月末試験の問題を作成していた二階堂は不意に名を呼ばれた。
わざわざ振り返らずとも分かる少し高めのソプラノの声。
パソコン画面からゆっくりと顔を上げ、今しがた自分の名を呼んだ人物を見上げる。



「どうしました、南先生。この時間は風門寺君の補習ではないのですか?」

「あ、はい。この後補習なんですけど、その前に…」

「はい?」



悠里は手首に提げていた小さな紙袋をすっと差し出し、にっこりと微笑んだ。




「お誕生日おめでとうございます、二階堂先生」




二階堂は一瞬目を丸くした後、軽い咳払いを落として。
短く丁寧に礼を述べ、紙袋を受け取った。



「私の友人が紅茶のお店をやっていて。私が好きな葉っぱとそれに合わせたお菓子なんです」

「そうなんですか」

「二階堂先生のお気に召して頂ければいいんですが…」

「とても有り難いです。早速今夜から使わせて頂きます」

「良かった」



そう安心したように笑う悠里に心臓は騒ぐばかりで。
頬が緩みそうになるのを懸命に抑える。
それは彼女の同僚に対する単なる社交的な贈り物だったとしても、建前無しで嬉しかった。


今夜はいい夢が見れそうだ。



柄にもなくそんなことを考えて小さく笑った。




end.
二階堂先生誕生日おめでとうございます!
 

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