SRX-log

□涙色の嘆き
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コンコン、と誰も居ないと分かっている部屋の扉をノックする。
少し待ってみても、当然返事なんかない。

そっとドアノブを回し、扉を開く。



「……タクトくん」



主のいない部屋は静まり返っていて。
整いすぎたその風景は生活感をあまり感じさせない。

それなのに彼の気配はそこかしこに残っている。
目をつぶれば、いつも通りに声が聴こえてくるような気さえするのに。


ねえ、タクトくん。
この部屋で色々な話をしたよね。
最後に話したあの日は、優しく笑ってくれたよね。

嬉しかったんだよ、だって初めの頃はあんなに避けられてたんだから。


だけどそれがタクトくんのみんなを想う故の優しさなんだって、分かってた。
みんなを守るための行動なんだって、知ってた。


だからこそ嬉しかったの。

わたしを仲間だと認めてくれたんだと、そう思えたから。



「……タクト、くん」



ごめんね。

貴方を守れなかった。

守りたかったのに。
死なせたくなかったのに。
大切だったのに。


わたしのせいで、わたしの力が足りなかったせいで――――……




「貴方を、死なせてしまった……っ」




耐え切れなくなった瞳から、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。



『誰も死なせない。みんな守ってみせる』



一番最初に彼とした約束を。
わたしは破ってしまった。


指揮官、失格だ。




「タクトくん、タクトくん……っ」




涙が溢れて止まらない。
気付かなかった。


わたしはいつからこんなに、





「会いたいよ…ッ」





彼のことを、好きになっていたんだろう。






(今さら何もかも、遅いけれど)



 

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