SRX-log
□オトナでコドモで
1ページ/1ページ
偶然、自販機の前でユゥジはアキラと出くわして。
それからごく自然な流れで、二人はその横に備え付けられたベンチに腰を下ろし、缶を片手に世間話をし始めた。
そんな時。
「ユゥジくんて、意外と子どもっぽいところあるよね」
アキラがふと思い付いたように零した言葉に。
缶ジュースに口を付けていたユゥジは目を瞬かせた。
「そうか?」
「うん、だってヒジリくんが来たばっかりの頃とか掴みかかってたでしょ?」
「いや、まあアレは……」
「他にも色んなときに一番熱くなるのってユゥジくんかなぁと思って」
身に覚えがあるだけに返す言葉がない。
ユゥジ自身、それなりに自覚はあるのだ。
最年長者で、本当なら一番大人でいなくてはいけない筈の自分が。
実は一番大人げないかもしれないということに。
「何て言うか、だっせぇよなぁ……」
「? どうして?」
「だってさ、もっと大人になれよって思うだろ?アキラも」
「わたし?」
「もっと大人っぽい奴の方が……お前も好きなんじゃないのか」
言い終わってからユゥジは己の失言に気付く。
こんなのまるで、アキラが自分をどう思っているのかが気になると暴露しているようなものじゃないか。
年下の女の子に、しかも自分の上司に向かって何を口走っているんだか。
居心地の悪さを誤魔化すようにガシガシと頭を掻く。
真面目で、しかしどこか抜けているアキラは、ヴォクスに乗り込めば“天才指揮官”へと姿を変える。
その的確で迅速な判断にユゥジだちは幾度も救われてきた。
もしかしたら誰よりも冷静に状況を把握しているのは彼女かもしれない。
そんなアキラに、自分はどう思われているのだろう。
そんな日頃から内に秘めてきた小さな不安が、うっかり顔を出してしまった。
何だか情けない気持ちになりながら、「忘れてくれ」とユゥジが声にする前に。
アキラは眩しいほどの笑顔で、答えた。
「わたしはそういうユゥジくんの方が好きだな」
「は…?」
「だってユゥジくんが熱くなるのは、いつも誰かのためでしょう?それってすごく素敵なことだと思う」
予想だにしなかった彼女の返答に、ジワジワと顔に熱が集まり出す。
それを気付かれたくなくて、缶を最後の一滴まで喉に流し込む。
ああ、やっぱり自分はまだまだガキだと実感する。
笑って誤魔化せるほど、どうやら自分はオトナじゃないらしい。
(ああもう、緩むな、俺の頬!)