02/21の日記

21:44
懲りずに落乱(こねた)
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今はコラボ書いてます。
でも息抜きに書きたくなったので大分前に書いた落乱小ネタ(10*08*23)の設定で相手は富松作兵衛

暇潰しにどーぞ!












三之助が拾ってきてしまった異界の紫苑。
その第一印象は、只恐怖だった。

ポッと出のそいつは身分さえ不確かで、立花先輩のように髪が綺麗で、顔も整っていて何処かでみた西洋人気のようなのに眼光は鋭く、俺は実力のあるそいつにいつか殺されるのではと不穏な妄想をした。

あの地獄の体育委員会の活動でピンピンしてるし、下手な六年生には勝ててしまうし、座学でも一番だし、性格も悪いわで近寄る気にはとてもじゃないがならなかった。

けれど、同期で俺は用具委員で奴は体育委員会。主に七松先輩の破壊活動と道具の貸出しで顔を合わせることは、少なくなかった。

「――すまない、桶を貸して欲しい」
「お、おう!ちょっと待ってろ」

異界の紫苑は、怪我をすると必ず用具倉庫から桶を借りていった。
自身で手当てするためだろう。以前見掛けたことがあった。結構な深手にも関わらず自身で手当てする様を。
異界の紫苑は医務室を利用しない。
それに対して善法寺先輩が怒って、それから哀しそうな顔をしたが、頑なに彼は手当てを拒んでいた。

近頃、桶の貸出しが頻繁だ。



「さもぉーん!三之助ぇー!!」

今日も今日とて同じクラスの迷子共を探す。
何をどうすればこうなるのか意味がわからない。

荒々しく木の枝を掻き分ける。
その隙間から除く遠くに浅萌木色を見つけ、期待に胸が踊った。

「見つけ――」

違う。
制服の色は確かに同じだが、探しているものではなかった。
次屋三之助でもなく神崎左門でもない――異界の、紫苑だった。

それを理解した富松は慌てて身を隠す。
幸いにも彼方は気づいていないようだった。

紫苑は崖の縁に立ち、下を覗いているようだ。

(危ねぇな…落ちたらどうすんだ)

もし、かしたらで嫌な想像が頭を巡る。

(つーか、自殺、とか――)

しそうだ、とハラハラしながら見守る。
そんなことはないとは思うのだが、最近の紫苑は用具倉庫に頻繁に来ていたのだ。
異界に帰れないことを儚んでとか――ありえないわけではない。

(……左門と三之助、探さねぇと)

動きがないことを確認して捕獲用の縄を握る。
作兵衛が立ち上がったそのとき、紫苑の身体がグラリ、前にぶれた。

そこから想像出来るのは、一つ。

「っう、わぁあああっ!!」
「!?」

咄嗟に、持っていた縄を迷子共にするように紫苑の身体に巻き付け自分の方へ引っ張る。
力いっぱい引いたら紫苑の身体は左門よりも軽く、宙に浮かび、作兵衛に飛び込んでくる。
勢いのついた彼を受け止めきれず、二人は倒れこんだ。

「おい、何を――」
「ばッッか野郎っ!!」

ゴツッ!!

作兵衛は自慢の鉄拳を、紫苑の頭にめり込ませた。
痛覚が鈍いのではと思わせる迷子も唸る鉄拳だ。
紫苑は殴られた部分を押さえ必死に痛みに耐える。

それに構わずに作兵衛は紫苑に怒鳴りつけた。

「自殺とか信じらんねぇ!テメェの命くらい大事にしろよ!」
「誰がじさ――」
「確かに辛いかもしんねぇけど!そりゃ俺もお前の事あんま好きじゃねぇけど!死んでほしいなんて思った事ねぇし!」
「おい、」
「悩み事あるなら聞くし!つーかお前最近桶の貸出し多いんだよ馬鹿!手当てくらいいくらでもしてやるから自殺なんてやめろぉおお!!」
「誰が自殺志願者だ人の話聞けっ!!」

ゴンッ!!

今度は業を煮やした紫苑の拳が作兵衛の頭にめり込んだ。
こうも強烈に殴られることは少ないため、脳が揺れるような感覚がした。

「ってーな!何すんだ!」
「貴様が先にやったのだろうが!」
「それはお前が自殺なんかしようとするから――」
「それが勘違いだと言っているんだこの阿呆!」

紫苑の言葉に作兵衛はキョトンとする。
ふん、と大層不機嫌に此方をみる紫苑に、作兵衛は納得いかなかった。

「だ、だって今、崖から飛び降りようと……」
「……こっちに来い」

身体に巻き付いた縄をほどき、先導する。
崖の縁に立つと、下は思っていたよりも浅く常人なら怪我をしてしまうかもしれないが我ら忍なら下れないこともない。
成績一の紫苑ならば尚更だろう。

「あれを見ろ」
「!」

紫苑が指さした先には、浅萌木色の二つの影。
拓けた場所で休憩している同級生の神崎左門と次屋三之助の姿があった。

「あいつら……!」
「…神崎は兎も角次屋は同じ委員会だからな。降りて奴らを捕まえようとしただけだ」
「………」

自身がしたことに作兵衛は頭から血の気がなくなっていくのを実感した。
勘違いの上に手をあげるとか――作兵衛は殺される、と思った。

「すいませんっしたぁああ!!」

作兵衛は思わず勢いよく土下座した。
断罪をまつ罪人のような気分で地面に額をつける。
すると頭上からため息が聞こえ作兵衛は思わず肩を揺らした。

「富松、止めろ。頭はそんな軽々しく下げるものじゃない」
「異界の……」

それは咎めるというより、幼子を宥めるような声だった。

恐る恐る顔をあげると、紫苑は苦笑のような想像していたよりもずっと、優しい顔をしていた。
紫苑は視線を合わせるように作兵衛の前にしゃがんだ。

「――お前が思ったこと、わからないでもないしな」
「え……」
「向こうから此方にくる時、崖から足を踏外したんだ。同じ事したら帰れるかもしれないと、思ったことは何度もある」
「、」
「けど、それでは確証のない自殺行為だ」
「…おう」
「俺は、生きてあの人のところに帰る。多少の無茶はするが、絶対死なない」
「…絶対だな」
「ああ。だから、余計なことしなくてもいい」

突き放すような言葉。
言外に一人で大丈夫だと言う紫苑に、作兵衛は目眩がした。
だって、一人でいたあの背中は、今にも崩れそうだった。

一人にしては駄目だ。
あの迷子二人のようにどうなってしまうか予想できない。
傍に、誰かがいなければ。

帰りたいと、泣いている。

「……お前、迷子なんだなぁ」
「はぁ?」

作兵衛の口からポロリ、零れるように告げられる。
それに紫苑は怪訝そうな顔したが、作兵衛にはすっぽり、何かが嵌まった気がした。

そうだ、紫苑は迷子だ。
見知らぬ土地で一人、置いてきぼりの子猫のような。

ならば、帰れるように手を引かなければ。

妙な使命感が、作兵衛の中で生まれる。
作兵衛は紫苑の細い手を掴んだ。

「よしっ、先ずは奴等つれて学園に帰るぞ」
「……おい、何故俺まで、」
「だってお前、迷子だし」
「誰が迷子だっ!!」

怒りだした紫苑にもう恐怖を感じない。
作兵衛にとって紫苑は迷子になっていないと言う下の二人と同列になった。

「帰ろうぜ」

紫苑が帰るまで、それまでは俺達が帰る場所。
それなら寂しくないだろう。

三年ろ組、富松作兵衛。迷子捕獲のスペシャリスト。

俺に任せろと、作兵衛は紫苑に笑った。











なんぞこれ
意味がわからないのは蓮も一緒だよ!

取り敢えず富松は男前すぎてまじ結婚して欲しい

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