05/09の日記

13:02
好意は免罪符にならない(黒バス・境界線主)
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誠凛高校1年生。男子。
帰宅部、助っ人要員(予定)









「す、好きですっ!付き合ってください!」

図書室の隅で本を探している間に、隣からの声。
顔を真っ赤にさせ、震える声を張り上げてそう口にしたのは確か、隣のクラスの女子だった気がする。
スカートの横で握りしめている手は震え汗ばんでいる。

一応周りを見るが傍には誰もいない。
つまり、言葉の対象は自分である。
面倒臭い、という言葉とため息を飲み込む。
ここで言葉にすると更に面倒になることは目にみえていた。

「悪いが、興味ない。他をあたってくれ」
「っ、あ、遊びでも、セフレでも、二番目でもいい!だからっ」

吐き出されたような、すがるような言葉に今度こそため息を吐いた。
軽く見られたならば心外だ。
びく、と揺れた身体にもう何も思わなかった。

「そういうのは間に合ってる。邪魔しないでくれ」

本棚から適当な本をとり、表紙を捲る。
すると彼女はそこから出口へ駆け出した。

姿が見えなくなったと同時に、本を閉じる。
適当にとったそれは面白くなさそうで、元の位置に戻す。
代わりにその本と同じ段にあった目的の本が目に止まり、それを取る。
類似本をとろうとしたら、また横から声がかかった。

「あの、できれば図書室で恋愛沙汰やめてくれませんか」
「それは相手方に言ってくれないか。……黒子、だったか」
「、」

同じクラスの図書委員――黒子に返すと、彼はわずかに瞠目した。
何か変なこと言っただろうか、と首を傾げると無表情に口を開く。

「はい、黒子です。八神君。まさか名前を覚えられていると思いませんでした」
「これでも記憶力はいいんだ。クラスの人間くらい把握している」
「というより、声をかけて驚かれないことに驚きました」

僕は影薄いので、と淡々と述べる黒子。
そういえば彼は出席を取る際抜かされることが多い。
誰かが幽霊のようだと言っていた気がする。

「耳も良いんだ。物音とかよく耳に入る」
「そうなんですか」
「ああ」

まさか気配を覚ったなどという厨二発言をしたならば妙な目で見られるだろう。
人より薄い気配の黒子は紫苑にとっては逆に目立つ人間だった。
身に染み付いた警戒心が憎い。

借りるから宜しくと、三冊ほど黒子に渡す。
はい、とうなずきカウンターへ二人で進む。
本に挟まっている貸し出し票を抜き作業を進める黒子を眺める。
カタン、と貸し出し票を定位置らしいそこに入れると黒子はそういえば、と口を開いた。

「八神君はお付き合いしてる、またそれに類似する方みえるんですか?」
「いるようにみえるか?」
「いえ全く」
「正解」

雰囲気緑間くんと赤司くん足して割った感じしますし、と言われた。
誰だ緑間と赤司。

すると黒子はため息を吐きながら本を差し出してきた。

「さっきの言い方だと勘違いされてしまいますよ」
「別にいい。もうすでにそう見られていた訳だしな」

黒子から本を受け取り、脇に抱える。
なまじ顔がいいとヤりたい放題だろいいよな、ということをよく言われるのだ。
全くもって心外である。

「だいたい失礼な話だと思わないか。好きだからヤらせろだなど。強姦か。こっちだって好きな人としたい」
「意外とロマンチストですね。好きな人いるんですか」
「いない」
「童貞ですか」
「黒子からそんな言葉聞くと思わなかった。悪いか」
「こちらも意外ですよ。八神君意外と……」
「そこで黙るな気になるだろう。やはり言うな。傷付く気がする」

そういうと黒子は笑った。

彼へいつも表情が変わらないから珍しいものを見た気がする。

「ところで八神君」
「なんだ」
「今携帯持ってますか?」

3分後、アドレス帳にか行が一件加わった。

あまり連絡こないだろうと思っていたがそれを覆され、マネージャー業や家庭教師、臨時コックをやらされることをこの時はまだ知らなかった。









黒子って案外強かで笑える。

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