12/13の日記

23:06
懲りてないよ異界の紫苑(落乱)
---------------

正直とても書きやすいとです。
医務室編。











「数馬ぁ、包帯貰えねぇか」
「えー?どこ怪我したのさ!ちゃんとみせてよ」
「俺じゃねぇんだよ!」
「じゃあ誰に」

保健室にて、数馬が当番をしていると同学年の作兵衛が入ってくるなり包帯を要求される。
包帯は保健室の備品であるので無駄には使えない。訝しげに問うと、彼は気不味そうに言葉を濁す。

「予算のこともあるし、ホイホイ渡せないよ。いらない褌集めてるくらいなんだから」
「……紫苑だよ。なんも言わねぇけど怪我してる、と思う」
「紫苑って……異界の?」
「おう」

数馬が記憶する限り彼が保健室に来たのは二度程だった気がする。
それも両方彼は気を失っていた。

全てを拒絶している彼はい組ともあっては組の数馬は近寄りがたい。
今作兵衛の口からその人物のことを聞いたのさえ珍しいものだと思う。

作兵衛は頭を掻いて目を反らした。

「あいつ、しょっちゅう怪我はしてる。でも、自分でどうにかしようとしちまってんだ。前までは用具の備品借りに来てたから良かったけど今はとんと。自分で道具揃えたのもあるみてぇだけど。迷子のくせに」
「用具で手当てしてたの?変なの」
「桶とかそういうのだよ。ま、道具事態貸出多いけどな」

よくみるから面倒見のよい作兵衛は気になってしまったのだろう。
要求の理由に数馬は難しい顔をする。

「だったら、異界のが保健室に来てくれないと。怪我の具合にもよるし」
「ぜってぇやだって言うんだあいつ。何意地張ってんだか」

作兵衛がため息を吐くのに苦笑する。

「多分、自尊心だけじゃないと思うよ」

保健委員会委員長善法寺伊作の声に二人は揃って彼をみる。
奥で薬を煎じていた伊作は優しく笑って手を止めた。

「どういうことですか?」

先の言葉の真意を知るべく数馬が問うと伊作は体を此方に向ける。

「君たちはどんな場所が一番死に近いと思う?」
「どこって……」
「戦場じゃないんですか?」

人が死ぬというなら合戦場だろうと答えると伊作は首を振る。
そして、トン、と床を指先でつついた。

「正解は、ここ。人を生かそうとするこの場所こそ、人が一番死ぬ。違和感なくね」

伊作の言葉に二人ははっと息を呑む。
確かにここならば人が死ぬ。
そして、自然に殺せる。
治療と称してなんでも出来る場所なのだ。

「……異界のは、ここが怖いから来ないんですか?」

数馬の呆然とした声に伊作は答えない。それこそが答えだった。

「なんでぇそりゃ!別に殺されるようなことなんか」
「0じゃない。富松は怖くなかったかい?得体のしれない紫苑が。少し考えればわかることだったよ。紫苑は周り全てが怖いんだよ。だって、彼から見たら僕達が得体しれないんだから」

伊作の言葉に作兵衛が声を詰まらせる。

数馬は目から鱗が落ちた気分だった。
完全無欠のような彼がそんな臆病にはみえなかったからだ。

「紫苑はとても臆病なんだよ。そして、とっても不器用。その気があるなら声を拾ってあげて。富松、君にはこれを渡しておくよ」

そういって作兵衛が手渡されたのは一巻の包帯と貝殻に入った軟膏。
小さくお礼を述べると慌ただしく退室した。


「……伊作先輩、」
「なんだい?」
「友達なら、怖くないでしょうか」
「…どうかなぁ。紫苑の元々の性質もあれだし」

数馬の問いに困った顔をする。いかんせん、紫苑自身そんなに素直ではない。

「でも、そうだね。改善するんじゃないかな」
「僕も、行ってきていいですか?作兵衛だけじゃ、傷の具合わかりませんし」
「うん、行ってらっしゃい」

許可が出ると数馬は救急道具を引っ付かんで富松の後を追う。

学校の人物の健康を整える為の保健委員だ。
殺すなんてとんでもない。誤解を解くべく数馬は廊下の床を強く蹴った。

前へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ