Poke-mon
□どうなっちゃっても魅せてよ
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例えばその結い髪からちらつくうなじとか
桃色のシャツの胸元から覗く緩やかな鎖骨のラインとか
愛情を込めてポケモンを世話する少し荒れた指先さえ
それは確かに魅力的だけれども
見えないところがあるならば、見たいと思うのは至極普通の感情な訳で
「そりゃ、ただの言い訳じゃないのか」
「言われずともわかっている…ただ見たいだけだと」
何かを思い悩んでいるような様子のジンダイに好奇心で声をかけたダツラははやくも聞くんじゃなかったといった態度を惜し気もなく面に出し始めている
そんな彼を自分から聞いてきたくせにと内心むっと思いながらもジンダイは胸の内を外に出せたことで少しだけ気が楽になったような気がした
「全てを知ることが愛だとは思わんが、何も知らずにいられるかと言われるとそうでもないのだ……難しいな、恋愛とは」
「オッサンの口からそんな台詞が聞けるとはな。…やばい、さぶいぼ立ってきた」
「喧嘩を売っているのかダツラ。即金で買うぞ」
「無理無理、俺手持ち強いのファクトリーに預けてきたもんよ」
「…まぁともかくだ。もっとこう彼を知る方法はないだろうか」
「うーん……ないことはないけどな」
独り言のように呟いたジンダイの言葉に何の気無しにダツラが答える
こちらも負けず劣らず独り言に近いそれだったが、ジンダイはしっかりとそれを聞いていたようでテーブルを挟んで向こう側に座っているダツラにぐぐいと詰め寄った
「…詳しい話を聞かせてもらおうか」
「食いつきよすぎだろ。…そんなに切羽詰まってるのかよ」
いつになく真剣……というか必死な様子のジンダイに呆れながらもダツラはその妙策を彼に授けたのだった
「あの……」
「どうかしたかね?」
「もう時間も遅いですし、そろそろ帰らないと皆さん心配されるのでは?」
彼の家で二人きりの夕食を済ませ、食後のコーヒーを啜っていると、帰るには遅いであろう時間を気にするように怖ず怖ずと尋ねたレイジににこりと笑いかけてジンダイは問い返した
「問題ない。子供でもあるまいし、一晩帰らずとも心配されることはあるまい」
「そ、そうですよね。すみません、差し出がましいことを言って。え…と、先にお風呂どうぞ。後で着替えを持っていきますから」
にべもなくそう言われてしまえばそれ以上何も言えなくなってしまったのか、彼は食器の片付けに取り掛かりながらジンダイに先に風呂を使うように勧めた
「いや、もう少し休んでからにするとしよう」
申し出を丁重に辞退しながらジンダイはこちらに背を向けるレイジに視線を注ぐ
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