Poke-mon

□子育てしましょ
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「ごめん……今は、帰ってこないで……」


電話越しに憔悴しきった声


常日頃から「困ったことがあったらいつでも帰ってこい」と言っていた兄からの
初めての拒絶だった






「あの馬鹿兄貴め……帰ってくるなも何も、あそこは俺の家でもあるんだぞ?」


苛立ちを隠しきれないままシンジは懐かしきトバリの街に降り立っていた

先日電話でちょっと顔出すと告げた自分に帰ってくるなだのとタワケタことを吐かす兄に直接文句を言ってやる為である



まだジム巡りも修業も途中だがそんなことは知ったことではない
今はこの腹の虫を収めることの方が最優先である



どかどかと荒れ狂う怒りを露にしつつ家の前までやってくると、なにやらいつもよりも家の中が騒がしいことに気がついた


「………?」

何事かと思いつつ玄関を開けると……



「うぇぇぇん……」

「あぁよしよし…もう泣かないで下さいねっ」

「……………おい」

「へ?あ…レイジさんの弟さん…??」



そこには泣いている赤ん坊をおんぶしてガラガラ片手に必死にあやしているらしい……よく知ったピンク頭

というかそれ………まさか…まさか………



そこまで考えて魂が抜けそうになった
ふらりと足元がよろける


そんな……俺の為に独身を貫くと言ってくれた兄貴が……こんなチンクシャを嫁にした揚げ句子供まで……



「……おい」

「へっ?」

「兄貴はどこだ?!」

「い、今お風呂ですけど……って、あぁぁぁっ!!」

「?!」

状況がよく飲み込めないまま、奴がいきなり叫び声を上げて風呂場がある方へと駆けていく
俺も訳がわからぬままに後に続く

勝手知ったる感じで風呂場のガラス戸を引くと奴は浴室へと入っていく

「お前何して…」

「レイジさん!しっかりしてください!!寝ちゃ駄目ですってばぁっ!!」

「………ふぇっ?!」


キンキンと響く声に数拍遅れてばしゃりと湯が跳ねる音と共によく聞き知った間の抜けた声が上がる


「あー…ごめん。また寝てたの俺………あれ?シンジ?何でここに……」


ぷつん


その言葉にシンジの一瞬忘れかけていた堪忍袋の尾が一気に切れた


「どうして…だと?!兄貴こそ何なんだこれは?!説明しろ!!」

「うぇぇぇんっ」

怒鳴り声を上げた瞬間スモモの背中に背負われた赤ん坊がいきなり甲高い声で泣き始め、それを見たレイジは慌ててその子供をあやしにかかる

「あぁよしよし、びっくりしたんだね。ごめんねぇ……あ、シンジ。とりあえず居間で待っててくれるかい?ちゃんと説明するから、ね?」

「うぇぇぇぇ…」

「うるさい!!」

「シンジ怒鳴っちゃ駄目だって。スモモ、連れてってくれる?」

「わかりましたっ」

「おいっ、こら離せ!俺はまだ話が……」





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