Poke-mon

□トリックアンドトリート
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ほら、昔よくやったじゃないか



「覚えてないな」

昔の写真を眺めながら嬉しそうに問うたレイジの言葉を一蹴してシンジは盆の上の甘いポフィンをひとつ摘んで口に放り込んだ

「ほら、小さい頃トバリシティの町内会でハロウィンパーティーがあってさ。俺と一緒にゴーストの格好したじゃないか」

「だから、知らん」

「もー、写真まで残ってるのにそういうこと言う…」

そう言ってほら、と見せてくる写真には確かにゴーストに仮装してお菓子を両手にニッコリ笑っている自分達が写っている

だがそんな動かぬ証拠を見せられてもシンジにはやっぱりそれに関する記憶が思い返されてはこなかった


「だから知らんものは知らん。こんな昔のことは覚えてない」

「うーん、そうか…」

ちょっぴり残念そうに肩を竦めてからレイジはふと何かを思い付いたように黙り込んでじっとシンジを見た


「シンジ」

「……なんだよ」

「トリックアンドトリート」

そう言ってレイジははい、とばかりに右の掌を突き出した

何だよこの手、と思ったシンジだが先程の話から考えるとこれはお菓子を寄越せということなのだろう


仮装してお菓子貰って回るような歳でもないくせに…などと半ば呆れながらもシンジは丁度手にしていたポフィンをその手にぽんと置いてやった


「…これでいいか」

「まぁ、わかってたけどさ。シンジなのでよしとしよう」

「フン」

苦笑交じりにポフィンを口に放り込むとレイジはクスッと笑んで席から身を乗り出して


シンジの額にちゅ、と触れるだけの口づけをした



「?!」

これには流石に驚いたのかガタン!と椅子を揺らして後ずさったシンジにレイジはしてやったりの笑みを浮かべて言った


「トリックアンドトリートだからね。お菓子も貰うけど悪戯も、ってね」

「そんな話聞いたことないぞ!」

「そっか、じゃあひとつ勉強になってよかったね」

「〜〜ふざけんな!」

「あー赤くなってる。可愛いなぁ」

まるでおちょくられているように言われシンジの中でぷつんと何かが切れた

負けてたまるかとばかりに机をばんと叩いてレイジを睨みつけるようにして言った

「トリックアンドトリートだ、兄貴」

「おっ、対抗するつもり?」

意外そうに驚いてみせながらレイジはテーブルの上の残り一個のポフィンを彼の方へと差し出した

さっきのシンジへのお返しというやつだろうか





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