Poke-mon

□連絡マダー?!
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鳴り続ける呼び出し音エンドレス
ブツンとももしもしとも言わない




兄が電話に出ない





「ちっ………」

今日で何度目になるだろうかこの舌打ち。待っている時間を無為に過ごす程いらだたしいことはないと思う

ふと後ろを見ると自分の後ろに電話待ちの列が出来ていたので仕方なく電話を切って順番を譲る


行列を後にしながらポケッチを見るとかけ始めてから10分も経っていてもう一度舌打ちしてしまう


10分も待たせておいて目的は果たせずじまい………その事実にある種理不尽な怒りを抱きながら荷物をまとめるとポケモンセンターを出た

そしてこないだゲットしたばかりのポケモンを閉じ込めたボールを取り出してじっと見つめる




今から行けば夕方にはトバリに着けるか……これを届けるのもさることながら、一言文句を言わなければ気が済まない



そうと決まれば話は早い


もう一つのモンスターボールを取り出して中からドンカラスを出すと、その大きな背に乗った


「飛べ、ドンカラス」

シンジの言葉を合図にドンカラスは大きな翼を一振りしてから空高く飛び上がった








そして日も沈みかけた頃、漸く街が見えてきたので近場で降り立ってからドンカラスをボールへと戻す
本当ならば走っていきたいところだが、余裕のない姿なんてなるべくなら見せたくはない
殊に相手が兄貴ならば尚のことだ


育て屋までの道を苛々しながらも少し早足で歩いていく

そしてとうとう柵の見えるところまでやってきて、ふと違和感に気がつく



…人の気配がない
ポケモンの気配もない


シン…と静まり返った広場を覗き込んでから玄関の方に回ると案の定鍵がかかっていた

念のためガレージの方にも足を運べば、彼が普段ポケモンの配送等に使うワゴンはなくなっていた





何とタイミングの悪いことだろう。シンジは玄関まで戻ってくると、冷たい戸口に背を預けてずるずると座り込んだ


今更あちらに戻る気にもなれず徐々に紫がかってくる空を見上げて彼は溜め息をついた

(これからどうするんだよ…)


そんなことを自問しても答えなどとうに出てしまっている



待とう。というか待つしかない


ある種の後に退けないという意地にも似た感情に自分がぬるいと思うが他に何を選べというのか


せいぜいはやく帰ってくることを祈る位だろう







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