Poke-mon

□My Dear Flaver
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「あ、それって新しい味?」

何の気なしに買ったガムを食べようとしていたら、外から帰ってきたレイジが興味津々に近付いてきた

別に新しい味だと意識した訳ではないからどう答えていいかわからずに彼に視線のやると何だかこちらの手元を覗き込んでいる瞳が心なしかいつもよりもきらきらとしているような気がした

「……食べるか?」

「え?いいの?」

やったー!とかシンジ優しいなぁ大好き!とか言っている彼を呆れ気味に見遣りながらシンジは紙のケースから取り出した一枚の包みを解いて口に入れた


口の中に広がる甘酸っぱいフルーツの味
傍らにははやくはやくと期待に目を輝かせている兄の姿



「ねぇシンジ、はやく」

そう言って口を尖らせた彼の、胸倉をくっと掴むとそのまま唇に自分のそれを寄せた





「……っ!」

驚きに見開いた瞳
重なった唇の隙間から舌を忍び込ませる

すると彼の肩が大袈裟な程にびくりと揺れた


絡み合う舌の間で先程のみずみずしい果実の甘さはすっかり薄まり、かわりに支配するお互いのくちづけの思考を痺れさせるような甘さに酔いしれそうになる


その一歩手前で退いて彼を見上げると、してやったりとばかりににやりと笑ってみせる


「……これ、味飛んでるんだけど…」

「新しいのをくれとは言わなかっただろう?」

「そういうこと言う…」

言いながらレイジは自分でガムを一枚引き抜くと包みを解いて口に放り込む

むぐむぐとそれを咀嚼しながら徐々に溶け出す甘さに不機嫌を治して漸く彼は笑った


「んっ…美味し☆」

「そんなので喜ぶなんてガキだな兄貴は」

「美味しいものを食べると幸せになるのは人もポケモンも同じだろう?」

「ふん……」


シンジはまだガムを噛んでいるレイジの耳元にそっと唇を寄せると、含み笑いをしながらぽそりと囁いた


「……確かに兄貴は美味いから幸せになれるかもな」


唐突に耳の中にダイレクトに飛び込んできたトンデモナイ言葉にレイジは思わず口の中で半ばゴムと化していたそれを飲み込んでしまう

「けほっ…な、何っ…?!……いきなりっ……こほっ…」


けほけほと苦しそうに噎せている彼の頬を赤く染めているのはきっと単純に呼吸困難だけではないのだろう


なんて可愛らしくて愛しい、紅



それは手の中でもはや存在を忘れられてしまいそうな甘酸っぱい紅とは比べるべくもない




かわいい
かわいい
たべてしまいたい

いとしいあなた






おしまい







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