Poke-mon

□桃色的時限爆弾
1ページ/3ページ


シンオウにも夏がやってくる


プールに海に夏祭りに花火に流れ星、それから……




「とは言っても……今年も誰も相手はいないけれどね」

預かったパチリスを抱き上げながらレイジは自嘲気味に呟く


ずっと幼い頃は親から貰う特別なお小遣をにぎりしめてシンジと夏祭りに行っていたけれど、先日久しぶりにここを訪れた彼を誘ったら「ガキっぽい」と鼻で笑われてあっさりと断られてしまった

スモモは道場のお弟子さん達と出店を出すらしく逆に遊びにきてくださいね!と言われてしまった

かといって一人でまわるのも何だか淋しい


だから今年も店でひとり留守番となるのだろう……そう思うと遠くから響いてくる祭囃子も何だか空しいものに聞こえてくる





「花火位はここから見ようかな…」

なんて独り言をつい呟いてしまったりして余計に落ち込む

すると腕の中のパチリスが元気を出してと言わんばかりに擦り寄ってきゅるきゅると鳴き声を上げる


「…そうだね、一人じゃないよね」

ちょっと沈んでいたレイジを元気づけるようにいつの間にか周りに集まってきていたポケモン達に胸の奥が何だかほっこりと温かくなってくる

「じゃあ皆でポフィンでも食べながら花火見ようか?」

レイジの言葉に周りで一斉に歓声が上がる

普段は食事の後には間食を摂らせたりはしないのだが今回だけはいいだろう

庭に生えている木から木の実をいくつか採るとレイジは台所へと向かった







「…うん、これだけ作れば足りるよね」

皿の上に沢山並べたポフィンを満足げに見下ろして自画自賛するとレイジは早速それを中庭へと運びにかかる


ところが、庭に近付くにつれて何だかポケモン達が騒がしいのに気付き彼は首を傾げた
喧嘩だろうか?

自然と早足になりながら外へ出ると遠くの方にポケモン達の近くに佇む青を見つける

つんと上に撥ねた宵闇色の髪。何処か近未来的な銀を基調とした服
そして何よりも感情の起伏をあまり出さない冷たい眼差し
以前に一度見たきりのそれだが、事が事だったために一度も忘れられなかったそれだ



「君は……?!」

皿をその場に置いてからポケットの中のモンスターボールを取り出してレイジは声を張り上げた

「その子たちに手を出すな!」

威嚇の意で彼の前にボールを翳してレイジは彼を睨みつける


目的はまだわからない。だが預かっているポケモン達に危害を加えるつもりならば容赦はしない……相変わらず無表情のままこちらを見つめている少年に隙を見せぬように気を張りながらレイジは彼の出方を待った






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ