Poke-mon

□solitaire
1ページ/6ページ



こんにちは


お久しぶりです


お元気ですか


今 困っています


助けて下さい


助けてください




どうしたらいいのか もうわからないのです    






「…もしもし」

『レイジ君かね?』

鼓膜を震わせるよく知った声に思考が凍る

いつもの少しぎこちなく、けれど優しい貴方の声


大好きな貴方のその声を、俺はいつからか電話越しにしか聞けなくなってしまっていた

「どうか…したんですか」

『明日、何か用事は入っているかね?』

よければ…と続くよりも先に俺は申し訳なさそうな笑みを作って答えを返していた

「申し訳ないんですけど、明日は配達に行かなくてはいけないんです」


あぁ、何言ってるんだろう。明日はずっとここにいる
なのにこの口はあまりにもたやすく嘘をつくのだ

「…そうか。それは残念だ」


そうです
本当に、本当に残念

どうかこの嘘に気付いて
…気付かないで


あぁもう畜生、どっちなの
それすらもわからなくなってる


そしてまたいつもみたいに他人行儀に謝って仕事を言い訳にして電話を切る



回線が切れれば途端に襲ってくる沈黙が鼓膜をちくんと刺して不覚にも泣いてしまいそうになる



泣いたら…駄目だ



滲みそうになる視界をきゅっとつむると俺は目尻をごしごしと拭った








シンオウの、トバリシティの空は今日もいい天気だ。気持ちがいい

目上に広がる青はどんな絵の具でも出すことが出来ないくらいに綺麗


こんなに綺麗な青空とは裏腹に俺の心の中はずっと真っ暗闇の土砂降りだ
本当に最悪


「はぁ……」

いい加減溜め息も何回出たかわからない位になってきた。それもそうなるのは決まって何もやることがなくなって無意識にあの人のことを考えてしまう時だ

「やだなぁもう…女々しいだろ俺……」




それはある日、本当何気なく考えてしまったあることから始まった

別に彼に何かひどいことを言われたとかそんなことじゃあない



本当にふとある時考えてしまったのだ


いつか「ジンダイさんがホウエンに帰ってしまう」ということを


それを考えた時からだ。俺の中で何かが狂い始めたのは



「…頭…いたい…」


あの時以来俺はジンダイさんと顔を合わせることが出来なくなってしまっていた

昨日のように何かと理由をつけては直接会うことを徹底的に避けた


会いたくないわけじゃない
けれど会いたくない







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ