Poke-mon
□魚は溺れる、水のない水槽
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どちらが先に溺れたかとか
そんなこと
「どうでもいいんだよ」
頬を撫でる手に手を重ねて青年は微笑んだ
ただこの手を差し延べた貴方とその手をとった俺がいる
確かで大切なのはただのそれだけ
窓の外には下弦の月
差し込むのは淡い月光
それに浮かび上がるのは、床の上に跪づいてベッドの上の少年を見上げる青年の姿
真白なシーツの上に足を組んで座る姿はさながら玉座に君臨する王のようでもある
事実、彼は自分の兄である青年にまるで暴君のように振る舞ってみせたこともある
が、それを咎められたことはけしてない
他人にそうすれば彼はいつも嗜めるように少年を叱ったが、自分に向けられる理不尽だけは何も言わずただ黙って甘受し続ける
それは身内である自分に対する寛容かはたまた別に自身などどうでもいいという諦めからか
ただ、そんな態度はただひたすらシンジを付け上がらせる結果となった
「……兄貴」
「何、シンジ」
「悦ばせてみせろよ、俺を」
「…どうやって?」
シンジはそれに答えるかのようにレイジの唇を指でなぞり、察せと言わんばかりの眼差しを向けた
レイジは少しだけ悲しげに目を伏せてから小さく微笑んで言った
「……それをお前が望むなら」
彼は拒まない
たとえどんなに理不尽な命であろうと従ってみせる
「ん…っ」
ちゅ……とぬめるような水音が静かな部屋の中に響く
時折苦しげにえづく声と溜息、それから小さな呻きと
膨張を続ける熱に体温の低い指先が絡み付く
そしてそのまま愛撫するかのように丁寧に根元からゆるゆると扱き、そしてくちづけた唇が再び熱を迎え入れる
始めの内は少しの愛撫で不様にも放ってしまっていたが、最近は耐性もついてきたのか上から彼にちょっかいを出す余裕さえできてきた
指先で頬を撫でたり髪を引いたり、後頭部に手を添えてわざと乱暴に揺すぶってみたり
そうして不意に歪む彼の泣き顔を見てシンジは殊更に悦びを感じ昏い笑みを零すのだ
彼を目の前にすると胸の奥から溢れ出る嗜虐心を抑えることが出来なくなる。何でも許してしまおうとする彼を咽び泣かせてその綺麗な顔を悲壮に染めたい
愛しているからこそそれは余計に
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