Poke-mon

□連絡マダー?!
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「………腹、減った」

ぐるる…と抱え込んだ腹部から情けない音が洩れる

そういえばずっと飛び通しだったから何も食べていない


ポケモン達には簡易食糧があったので先程それを与えておいた が自分の分は何も用意していなかった。これも自分の見通しの甘さが招いた事態に外ならないから文句は言えないが……流石にそろそろ限界のようで
仕方無しによろよろと立ち上がってから鞄を背負い直すとトバリデパートに向かって歩き出そうとした


その時だった



カッ、と背後からまばゆい光が当てられ思わず振り返ると、そこには愛車の運転席から驚いた顔を覗かせているレイジの姿があった


「シンジ?何してるの?」


ライトだけをそのままにエンジンを止めると、レイジは急いで車から降りてこちらに駆け寄ってくる

待ち侘びた彼の顔を見た途端にシンジの胸に理不尽な怒りが沸々と込み上げてくる

そして目の前までやってきた彼の胸元に飛び込むと無言でそれをばしばしと拳で叩いた


「ちょ…痛い、痛いってばシンジ」

突然のことでレイジが非難の声を上げるがそんなことも構わずにシンジは何も言わずに彼を叩き続けた

勝手に来た手前正論はあちらにある。兄貴だっていつも店の方にいるわけではないのだから


けれど、この怒りを内に秘めて終わりに出来るほどに大人でもないシンジはただただ彼に怒りをぶつけた


「シンジ、あのね…「うるさい!寒い!腹減った!待ちくたびれた!」

「わかった、ごめん!ごめんってば!」

まるで子供の癇癪のようで、痛いながらも何だかほほえましくて
レイジは苦笑いを浮かべて彼をどうどうと宥めると彼に家の鍵を手渡した


「俺、車戻してくるから先に行って待っていて?ね?」

そう言い残してレイジは慌てたように車に戻ってからもう一度エンジンをかけ直し、ガレージの方に向かって車を走らせた


それを見送ってから、シンジは閉まっていたドアの鍵を開けて玄関の明かりのスイッチに手を伸ばした


重い暗闇をぱっと明るく照らす照明に目を細めてから、シンジは漸くわが家に帰ってきたという実感を噛み締めた




後数分もすれば慌てた様子の兄貴が美味しい夕飯と暖かな風呂と綺麗にベッドメイクされた寝床を振る舞ってくれるのだろう

久々ということに託(かこ)つけて彼が動きにくくて困る位に引っ付いてやるのもいいかもしれない




「シンジ、お帰りなさい」

電子越しでない愛しい声
鼓膜を震わせるそれに漸く彼とちゃんと繋がったような気がした







おしまい






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