Poke-mon

□Little world
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《S》





レイジはこの火事で過去の大半を失った
未練がましく弟を待ち続けるあの場所も失った

客の為だと彼は言っていたがそれは詭弁だ
彼が本当に待ち望んでいた者はたったの一人だ


だが、そんなことももはや関係なくなっていた


彼の世界はもうここしかない
そしてそれを手にしているのは外ならない私で


彼のぬくもりに触れているだけでそれがよく実感出来た


「この温もりは私だけのものなのだ」と



「君がそんなに甘えただなんて知らなかったよ」

「…口が過ぎるぞレイジ」

「ごめん、そんなに怒らないで。ただ嬉しくて」

「嬉しい?」

「君がそんなふうに俺に頼ってくれるの、とても嬉しいんだ」

そう言って私の髪を梳く手は本当に優しくて
こういうものを慈愛というのかと頭の中で考える

今まで誰も私には与えてくれなかったし、それ故私も求めなかったそれだ


求めなかっただけでけして欲しくなかったというわけではないが



「レイジ」

「何?」

「もっとだ」

「甘えん坊」

「うるさい」


部屋の中に昼間の忙しさが嘘だと思える程に穏やかで緩やかな時間が流れていく

今ならそれは間違いなく幸せだと言える


二人だけの部屋
二人だけの時間


これが幸せというものなのだ。彼の温もりをより一層強く抱きしめながら私は思った






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