Poke-mon

□Little world
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《R》






本来ならば俺は彼を憎むべきなのだろう

だって彼が俺の大切なものを奪ったのだから


けれど何もなくなってしまった俺に残された道はただ一つ
彼に縋ることだけだった。それ以外に選択肢がなかった

ここから逃げれば街にはスモモや知った親切な人達はいるけれども、俺が頼ることでその人達に被害を被るのは嫌だったから

実際彼の束縛ぶりは酷いものだった
この部屋も彼がいない時には監視カメラで逐一彼に見張られ、少しでも部屋の外で長居をすれば彼が顔色を変えて詰め寄ってきた

最初はここでも何か自分に出来ることがあるのではないかと懸命に捜そうともしたが皆サターンの目を気にしてか誰も俺に関わろうとしなかった


そんな中でポケモンの世話をしている下っ端の人とはこっそり仲良くしてもらってはいるけれど
おかげで手持ちで残っていた子達の面倒だけはなんとか見てもらえている


本当にそれだけが幸いだった


それからは少しの間ポケモン達の様子を見に行く以外は部屋にずっと閉じこもっている
何もしないでいるのはひどく退屈で時計もないそこはまるで時間に置き去りにされているようでひどくぞっとしたが他に出来ることがないから仕方がないのだ

きっと玩具箱にしまわれた人形はこんな気持ちなのだろう

時間の止まった箱の中で持ち主が戯れに手を伸ばす瞬間をまるで自分の生きる全てのように待ち侘びるんだ


俺もそうだ
冷たい部屋の中で思うのはいつもいつも彼のこと
待ち続けるのも彼のこと

俺にはもう彼しかいない
そう思うことがどれだけ危険なことかわかっていながらそれに堕ちていくのを止めることがもはや出来ないでいた


ここは二人だけの部屋
君と俺だけの小さな小さな部屋







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